続・国家賠償について調べてみました。


国家賠償法1条
1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
2項 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。



代位責任説の場合、行為の主体たる公務員に故意・過失がなければ、国歌賠償責任は成立しません。
故意については問題ありませんが、過失については、公務員個人の内心に立ち入るのでは、公務員がどこの誰かを確定する必要があり、また、普段から不注意な公務員に対し、責任が問えなくなるおそれがあり、妥当ではないとされています。



判例では、抽象的過失を基準として、過失の有無を判断しています。公務員を特定する必要もありません。
いわゆる「過失の客観化」といわれ、通常尽くすべきである客観化された注意義務違反を過失認定の基準としています。



(最判昭57・4・1)

国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失による違法行為があつたのでなければ右の被害が生ずることはなかつたであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよこれによる被害につき行為者の属する国又は公共団体が法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもつて国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を免れることができないと解するのが相当であり、原審の見解は、右と趣旨を同じくする限りにおいて不当とはいえない。しかしながら、この法理が肯定されるのは、それらの一連の行為を組成する各行為のいずれもが国又は同一の公共団体の公務員の職務上の行為にあたる場合に限られ、一部にこれに該当しない行為が含まれている場合には、もとより右の法理は妥当しないのである。



(最判昭58・2・18)

本件事故は、体育館の使用をめぐる生徒間の紛争に起因するものであるところ、本件事故につきバレーボール部顧問の教諭が代わりの監督者を配置せずに体育館を不在にしていたことが同数諭の過失であるとするためには、本件のトランポリンの使用をめぐる喧嘩が同教諭にとつて予見可能であつたことを必要とするものというべきであり、もしこれが予見可能でなかつたとすれば、本件事故の過失責任を問うことはできないといわなければならない。そして、右予見可能性を肯定するためには、従来からの金武中学校における課外クラブ活動中の体育館の使用方法とその範囲、トランポリンの管理等につき生徒に対して実施されていた指導の内容並びに体育館の使用方法等についての過去における生徒間の対立、紛争の有無及び生徒間において右対立、紛争の生じた場合に暴力に訴えることがないように教育、指導がされていたか杏か等を更に綜合検討して判断しなければならないものというべきである。しかるに原審は、これらの点について審理を尽くすことなく、単に、前記2、(1)・(2)のような説示をしたのみで同教諭の過失を肯定しているのであつて、原審の右判断は、国家賠償法一条一項の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものというべきであり、その違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかである。



(最判昭59・3・23)

ところで、警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当たることをもつてその責務とするものであるから(警察法二条参照)、警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞れのある天災、事変、危険物の爆発等危険な事態があつて特に急を要する場合においては、その危険物の管理者その他の関係者に対し、危険防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができるものとされている(警察官職務執行法四条一項参照)。もとより、これは、警察の前記のような責務を達成するために警察官に与えられた権限であると解されるが、島民が居住している地区からさほど遠からず、かつ、海水浴場として一般公衆に利用されている海浜やその付近の海底に砲弾類が投棄されたまま放置され、その海底にある砲弾類が毎年のように海浜に打ち上げられ、島民等が砲弾類の危険性についての知識の欠如から不用意に取り扱うことによつてこれが爆発して人身事故等の発生する危険があり、しかも、このような危険は毎年のように海浜に打ち上げられることにより継続して存在し、島民等は絶えずかかる危険に曝されているが、島民等としてはこの危険を通常の手段では除去することができないため、これを放置するときは、島民等の生命、身体の安全が確保されないことが相当の蓋然性をもつて予測されうる状況のもとにおいて、かかる状況を警察官が容易に知りうる場合には、警察官において右権限を適切に
行使し、自ら又はこれを処分する権限・能力を有する機関に要請するなどして積極的に砲弾類を回収するなどの措置を講じ、もつて砲弾類の爆発による人身事故等の発生を未然に防止することは、その職務上の義務でもあると解するのが相当である。
 してみれば、原審の確定した前記一の事実関係のもとでは、新島警察署の警察官を含む警視庁の警察官は、遅くとも昭和四一、二年ころ以降は、単に島民等に対して砲弾類の危険性についての警告や砲弾類を発見した場合における届出の催告等の措置をとるだけでは足りず、更に進んで自ら又は他の機関に依頼して砲弾類を積極的に回収するなどの措置を講ずべき職務上の義務があつたものと解するのが相当であつて、前記警察官が、かかる措置をとらなかつたことは、その職務上の義務に違背し、違法であるといわなければならない。



公務員個人に故意または重過失があった場合は、国または公共団体はその公務員に求償権を有します(国家賠償法1条2項)。

しかし、被害者は公務員個人に対する損害賠償請求はできないとされています。



(最判昭30・4・19)
上告人等の損害賠償等を請求する訴について考えてみるに、右請求は、被上告人等の職務行為を理由とする国家賠償の請求と解すベきであるから、国または公共団体が賠償の責に任ずるのであつて、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また公務員個人もその責任を負うものではない。



賠償金といえば、いまもC型肝炎の訴訟で、原告の方と国との和解案がうまくいってないようですね。
変なことに税金使うより、そういった方々への賠償金にこそ、血税を使ってほしいものです。