議決権の代理行為について調べてみました。


性懲りもなく会社法です。
習うより慣れろ(∩´∀`∩)


株主の議決権は、代理人に行使させることも可能です(310条)。株主にできるだけ議決権行使が可能なようにする趣旨です。


310条(議決権の代理行使)
1項:株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
2項:前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。
3項:第一項の株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
4項:株主が第二百九十九条第三項の承諾をした者である場合には、株式会社は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
5項:株式会社は、株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。
6項:株式会社は、株主総会の日から三箇月間、代理権を証明する書面及び第三項の電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
7項:株主(前項の株主総会において決議をした事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条第四項及び第三百十二条第五項において同じ。)は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
1号 代理権を証明する書面の閲覧又は謄写の請求
2号 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求


下級審では、総会の定足数を確保するという経営者側の視点から、同条の趣旨を述べたものもあります。


会社法は、代理人資格については何も規定をおいていません。
そこで、議決権行使の代理人資格を株主に限定する定款規定の効力の有無、すなわち、310条1項の適用に例外を認めることは可能かが論点になります。


判例もちょこちょこあります。
まず、原則有効とするもの。


(最判昭43・11・1)

同条項は、議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の所論上告会社の定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によつて攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができるから、右商法二三九条三項に反することなく、有効であると解するのが相当である。


上の判例は、病気の株主の妻に代理人の資格を認めないことが違法ではないとしたものです。
239条は、現310条のことです。
有効とするのを限定的に捉える判例もあります。


(最判昭51・12・24)

「原審が適法に確定したところによれば、被上告会社の定款には、「株主又はその法定代理人は、他の出席株主を代理人としてその議決権を行使することができる。」旨の規定があり、被上告会社の本件株主総会において、株主である新潟県直江津市日本通運株式会社がその職員又は従業員に議決権を代理行使させたが、これらの使用人は、地方公共団体又は会社という組織のなかの一員として上司の命令に服する義務を負い、議決権の代理行使に当たつて法人である右株主の代表者の意図に反するような行動をすることはできないようになつているというのである。このように、株式会社が定款をもつて株主総会における議決権行使の代理人の資格を当該会社の株主に限る旨定めた場合において、当該会社の株主である県、市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、原審認定のような事実関係の下においては、右定款の規定に反しないと解するのが相当である。けだし、右のような定款の規定は、株主総会が株主以外の第三者によつて攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨に出たものであり、株主である県、市、株式会社がその職員又は従業員を代理人として株主総会に出席させた上、議決権を行使させても、特段の事情のない限り、株主総会が攪乱され会社の利益が害されるおそれはなく、かえつて、右のような職員又は従業員による議決権の代理行使を認めないとすれば、株主としての意見を株主総会の決議の上に十分に反映することができず、事実上議決権行使の機会を奪うに等しく、不当な結果をもたらすからである。」


ちなみに、この判例は、取消訴訟の追加主張することの可否についても有名な判例です。


株主総会決議取消しの訴えを提起した後、商法二四八条一項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないと解するのが相当である。けだし、取消しを求められた決議は、たとえ瑕疵があるとしても、取り消されるまでは一応有効のものとして取り扱われ、会社の業務は右決議を基礎に執行されるのであつて、その意味で、右規定は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるためその取消しの訴えを提起することができる期間を決議の日から三カ月と制限するものであり、また、新たな取消事由の追加主張を時機に遅れない限り無制限に許すとすれば、会社は当該決議が取り消されるのか否かについて予測を立てることが困難となり、決議の執行が不安定になるといわざるを得ないのであつて、そのため、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるという右規定の趣旨は没却されてしまうことを考えると、右所定の期間は、決議の瑕疵の主張を制限したものと解すべきであるからである。」


この問題は、弁護士とかならいいんじゃないの??という事案で、下級審で意見がいろいろあったりで、複雑みたいです。認められるとした判例もありますが、次に挙げる判例は反対してます。確かになーと思ってしまいます。


(宮崎地判平14・4・25)

「確かに,弁護士は一般に社会的信用が高く法律知識が豊富であるから違法・不当な行為をしない蓋然性が高いものであるし,A弁護士についても,その社会的信用の高さ等を考慮すれば,総会をかく乱するおそれは非常に小さいというべきである。しかしながら,原告主張のように,株式会社は総会をかく乱するおそれのない職種の者であれば非株主であっても入場を許さなければならないと解すると,株式会社は,総会に非株主代理人が来場した際には,その都度その者の職種を確認し,総会をかく乱するおそれの有無について個別具体的に検討しなければならないことになる。どのような職種の者であれば総会をかく乱するおそれがないといえるかは,明確な基準がなく,極めて難しい判断である。また,株主数が多い株式会社は,総会開会前の限られた時間に多数の来場者に応対しなければならないところ,受付において非株主代理人が総会をかく乱するおそれの有無について個別具体的に判断することは,受付事務を混乱させ,円滑な総会運営を阻害するおそれが高いというべきである。しかも,原告主張のような実質的基準を持ち込むと,かえって,経営陣が自らを支持する株主の代理人については総会をかく乱するおそれがないとして入場を許し,そうでない代理人については入場を許さないなど恣意的差別的判断を行い株主の権利が害されるおそれもある。」






この件に関して、精神的苦痛を伴ったといって、損害賠償請求まで起こした人がいるのも驚きです。
下級審ですが、人格権の侵害とまではいえないとして棄却してます。