故意について調べてみました。


長々しくなってしまいました…。
故意、奥深し。





意義
38条1項にいう「罪を犯す意思」。


A 構成要件要素でもあり違法要素・責任要素でもあるとする説(団藤、大塚)

1.故意の捉え方

ア 構成要件要素としての故意。構成要件該当事実の認識・認容
イ 責任要素としての故意。違法性に関する事実の表象、違法性の意識の可能性

2.基本的な考え
ア 構成要件は違法・有責類型である。故意という主観的要素が、行為そのものに保護法益侵害の可能性を内在させ、違法性の主観を推定する(主観的違法要素)と共に、責任要素の定型化として意味を持つ。
イ 故意は、犯罪の類型化自体に重大な役割を担う。
ウ 行為者に故意・過失があればこそ、行為についての非難を行為者に帰することができるから、故意・過失の本質は責任にある。

3.批判
同じ要素が、構成要件要素でもあり、違法要素、責任要素でもあるとするのはおかしい。




B 責任要素説

1.故意の捉え方
故意は責任要素であって、客観的な犯罪事実を行為者に帰するための要件である。

2.基本的な考え
結果無価値論を採り、違法判断にあたっては、法益の侵害・危険に関係のある外部的・客観的な事実のみが考慮されるべきである。

3.批判
行為の違法性は外部的・客観的側面だけの考察では明らかにならない。






構成要件的故意

構成要件に該当する事実、すなわち客観的な実行行為、構成要件的結果、実行行為と構成要件的結果の間の因果関係、行為の主体・客体・状況、規範的構成要件要素の認識・認容。
故意責任が認められるためには、行為者が構成要件に該当する事実を知っていることが必要であるので、構成要件的故意が必要とする。

故意があるというためには、犯罪事実を表象するだけでは足りず、少なくとも結果の発生を認容することが必要である。
故意責任の本質は直接的反規範的人格態度に対する非難であり、単に表象があるというだけでは行為者は規範の問題に直面しえたとはいえないこともある。もっとも、結果の発生を意欲しなくとも、それを認容すれば、行為者は規範の問題に直面しえたといえる。


故意の種類


A 確定的故意
犯罪実現(結果発生)を確定的なものとして表象すること。

B 不確定的故意

1.概括的故意
結果発生は確実であるが、客体の個数及びどの客体かが不確実な場合。
Ex.集会に爆弾を投げ込む。

2.択一的故意
数個の客体のどれかに結果発生は確実であるが、どの客体に発生するかにつき不明の場合。

3.未必的故意
結果の発生自体が確実でないが、発生するかもしれないことを表象し、発生してもかまわないと認容すること。









A 事前の故意(ウェーバーの概括的故意)
行為者が第一の行為によってすでにある犯罪を遂げたと誤信し、その発覚を防ぐためまたはその他の目的で、さらに第二の行為を行ったところ、第二の行為によって初めて、先に予期した結果が発生した場合。
因果関係の錯誤の問題となる。



B 事後の故意
行為者が一定の結果を生ずべき行為を故意なしに行った後はじめて故意を生じ、その後自体を自然の成り行きに任せたために結果が生じた場合。







条件付故意

犯罪の実行を一定の条件にかからしめる故意。
実行の決意が存在し、その実現を一定の条件にかからしめているに過ぎない場合には、責任非難を加えるべきであるから、故意が成立する。





責任故意

責任の次元で問題とされる故意。



1.違法性の意識可能性説(制限故意説)
ア 根拠
違法性の意識の可能性を故意の要件とする。
犯罪事実を認識認容している以上、行為者は規範に直面しているのであるから、違法性の意識の可能性があれば、直接的反規範的人格態度に対する非難をすることができる。

イ 批判
違法性の錯誤にのみ責任を認め、事実の錯誤についてはそれを考慮しないのはおかしい。
違法性を意識しえたのにしなかったという過失態度がどうして故意と評価されるのか。




2.違法性の意識必要説(厳格故意説)
ア 根拠
違法性の意識を故意の要件とする。
行為者が犯罪事実を認識していたとしても、その違法性を意識していなかったのならば、反対動機は形成されなかったはずであるから、故意責任を問えない。

イ 批判
確信犯人は違法性の意識を有しない。よって処罰できない。
過失によって違法性の意識を欠いた場合について、過失犯の処罰規定がない場合には処罰できない。




3.責任説
ア 根拠
違法性の意識の可能性を故意とは別個独立の責任要素とする。
犯罪事実を認識していた以上、本来違法性を認識すべきものであるから、現実に違法性の意識があったか否かは問題ではない。
もっとも、違法性の意識の可能性すら存在しない場合には、もはや責任非難を問うことはできない。

イ 批判
故意犯の成立には事実的故意にとどまらず、規範に向けられた行為者の人格態度を考慮する必要があるから、事実的故意に基づいて故意犯を認めるのは妥当でない。




4.違法性の意識不要説(判例)
ア 根拠
「法の不知は許さず」というローマ法に基づく。
法律は他律的規範であり、法律の規範の意味まで知る必要はない。

イ 批判
今日の社会通念に適合しない。
違法性の意識の可能性を全く欠いた行為者に責任を問うことになり、責任主義に反する。







38条3項の考え方についても変わってきます。








刑法38条3項
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。




1.違法性の意識可能性説(制限故意説)
ア 38条3項本文
法律の規定を知らないことは故意の成立を妨げない旨の規定であり、違法性の意識に関する規定ではない。

イ 38条3項但書
違法性の意識の可能性があっても、それが困難であるために違法性の意識を欠く場合に適用される。

ウ 「法律」(38条3項本文)
法律の規定(違法性の意識)




2.違法性の意識必要説(厳格故意説)
ア 38条3項本文
故意の成立には個々の法規の明文を知っている必要はないという趣旨であり、違法性の意識に関する規定ではない。

イ 38条3項但書
法律を知らない行為者の行為の違法性の判断が困難になる場合がありうるために設けられたものである。

ウ 「法律」(38条3項本文)
法律の規定




3.責任説
ア 38条3項本文
法律(違法性)の錯誤は故意の成否と無関係である旨を規定したものである。

イ 38条3項但書
法律(違法性)の錯誤により、違法性の意識を欠いたが、その可能性があった場合には、違法性の意識があった場合よりもその刑を減軽しうる旨を明らかにしたものである。

ウ 「法律」(38条3項本文)
違法性の意識(法律の規定)




4.違法性の意識不要説(判例)
ア 38条3項本文
法律(違法性)の錯誤は故意を阻却しない旨を明らかにした規定である。

イ 38条3項但書
法律(違法性)の錯誤につき、特別の事情あるときは、その刑を減軽しうる旨を規定したものである。

ウ 「法律」(38条3項本文)
違法性の意識






達成感は自己満足(笑)