公示送達について調べてみました。

よくよく考えると、自分が知らないうちに訴えられたらこわいです。




110条(公示送達の要件)
1項
次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
1.当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
2.第107条第1項の規定により送達をすることができない場合
3.外国においてすべき送達について、第108条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
4.第108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合

2項
前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。

3項
同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は、職権でする。
ただし、第1項第4号に掲げる場合は、この限りでない。







公示送達は送達場所不明のものに対しても送達できる制度なので、名宛人が訴状送達を知らずに、原告の請求認容判決がでた場合、確定判決には既判力が生じるので(114条)、もはや被告は、判決の効力を争えないのが原則です。


しかし、上訴の追完(97条1項)を認める判例もいくつかあります。
安易に認めると、公示送達が無意味になるので、どれもワケアリのようなかんじです。







97条(訴訟行為の追完)
1項
当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後1週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。
ただし、外国に在る当事者については、この期間は、2月とする。

2項
前項の期間については、前条第1項本文の規定は、適用しない。







(最判昭42・2・24)

被告とその法定代理人が住民登録をした場所に居住し、原告が訴提起直前に右居住の場所に被告の法定代理人を訪ねて訴の目的である債務の履行につき折衝したことがあつたにもかかわらず、原告から訴状の受送達者の住所が不明であるとして公示送達の申立がされ、よつて被告の法定代理人に対する第一審判決正本の送達にいたるまでのすべての書類の送達が公示送達により行なわれた場合において、被告の法定代理人が控訴期間の経過後はじめて判決正本の公示送達の事実を知り、ただちに控訴を提起したときは民訴法第一五九条にいう「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合」にあたるものとして、右控訴は適法であると解すべきである。








(最判平4・9・10)

民訴法一七一条一項に規定する「事理ヲ弁識スルニ足ルヘキ知能ヲ具フル者」とは、送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することができる程度の能力を有する者をいうものと解されるから、原審が、前記二1のとおり、当時七歳九月の女子であった上告人の四女は右能力を備える者とは認められないとしたことは正当というべきである。
そして、有効に訴状の送達がされず、その故に被告とされた者が訴訟に関与する機会が与えられないまま判決がされた場合には、当事者の代理人として訴訟行為をした者に代理権の欠缺があった場合と別異に扱う理由はないから、民訴法四二〇条一項三号(現338条1項3号)の事由があるものと解するのが相当である。
 前訴の判決は、その正本が有効に送達されて確定したものであるが、上告人は、前訴の訴状が有効に送達されず、その故に前訴に関与する機会を与えられなかったとの前記再審事由を現実に了知することができなかったのであるから、右判決に対して控訴しなかったことをもって、同項ただし書に規定する場合に当たるとすることはできないものというべきである。







(最判平4・4・28)

「被告について送達すべき場所が不明であるとして原告から公示送達の申立てがされ、一審判決正本の送達に至るまでのすべての書類の送達が公示送達によって行われた場合において、被告が、控訴期間の経過後に控訴を申し立てるとともにその追完を主張したときは、控訴期間を遵守することができなかつたことについて民訴法159条にいう「其ノ責ニ帰スヘカラサル事由」の存否を判断するに当たり、被告側の事情だけではなく、公示送達手続によらざるを得なかったことについての原告側の事情をも総合的に考慮すべきであると解するのが相当である。
これを本件についてみるのに、前記事実関係によると、Xやその代理人は、本訴提起の直前である平成元年3月に至るまでYと本件について継続的に和解の交渉をしており、X側の譲歩を内容とする和解成立も予想できる状況にありながら、しかも、Yが同年8、9月ころまで外国に行くとの連絡を受けていたにもかかわらず、その海外渡航による不在期間中に当たる同年4月25日本訴を提起し、Yがその住民登録をした丙川荘に居住していないことを承知しながら、その旨を確認した上、その転居先不明として、同年7月3日裁判所から公示送達の許可を受け(記録によれば、本訴の提起を急がなければならない事情は見当たらないし、Xは、Yが同年8、9月まで外国に行き、その後中野区内の叔母方に住民票の住所を移す予定である旨記載された前記書面を手中にしながらこれを裁判所に提出せず、それまでの交渉経緯等の一切の事情を伏せたまま手続を進めたことがうかがわれる。)、Y不出頭のまま勝訴判決を得たのであり、Yとしても、同年8、9月までは本邦に不在であることをXの代理人に連絡した以上、このような経緯で本訴が提起されることは予測し得なかったものというべきであり、Xの側には、公示送達制度を悪用したとの非難を免れない事情があるといわなければならない。そして、これらの事情をも総合考慮すると、YがXの粗暴な言動を恐れて住民登録の変更をせず、その居住場所、連絡先をXに知らせなかったとの事情があったとしても、Yは、その責めに帰すべからざる事由により控訴期間を遵守することができなかったものというべきである。」









昭和42年判決のように、原告が故意に悪用したような場合は、上訴の追完によらなくとも、再審事由(338条1項3号類推適用(被告の手続保障の機会が奪われた点で、同条同項の趣旨と合致するから))とすることも、確定判決の当然無効の主張をすることもできます。