条例と法律の抵触について調べてみました。

憲法94条
地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。


地方自治法14条1項
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。


上乗せ条例(法令の規制基準よりも厳しい基準を定める条例)や、横だし条例(法令の規制対象外の事項を規制する条例)が憲法94条、地方自治法14条1項に反しないかが問題となります。
これについての判例では、徳島市公安条例事件が有名です。




最判昭50・9・10)

地方自治法一四条一項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法二条二項の事務に関し条例を制定することができる、と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。





よって、上乗せ条例であっても、「特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき」であれば、「法律の範囲内」であるといえ、横だし条例であっても、「ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるとき」でなければ、「法律の範囲内」といえることになります。





他にも、1.財産権法定主義(憲法29条2項)、2.罪刑法定主義(憲法31条)、3.租税法定主義(憲法84条)との関係で、条例と法律の抵触が問題となります。





1.財産権法定主義(憲法29条2項)


憲法29条2項
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。



(最大判昭38・6・26)

思うに、憲法九四条は、地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、行政を執行す権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができると規定しており、地方自治法一四条一項は、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、同法二条二項の事務に関し条例を制定できることを定めている。そして、同条項の事務は、公共事務、委任事務、行政事務であるが、ここに行政事務とは、地方公共団体の区域内における委任事務以外の行政事務で国の事務に属しないものをいい、それは事務の性質上人の権利、自由の規制をその内容とする場合が多い。それ故、普通地方公共団体は、その行政を執行ずるに伴い、必要ある場合には、法令に違反しない限りにおいて、行政事務として、人の権利、自由を規制することができ、これがため条例を制定することができるのであつて、それは、憲法九四条に基づく地方公共団体の権能というべく、地方自治法二条、一四条一項、二項はその趣旨を承けた規定であり、これがために一々の事務につき、法律による特別の委任、授権の必要はないのてある。もちろん、法令違反しない限りというのは、既存の法令に基本的人権の規制につき未だ規定がされていない限りは、地方公共団体が、条例で基本的人権につき、いかなる制限もできるというわけではない。既存の法令が何ら特別の規制をしていないということは、その基本的人権を自由に享有せしめることとする法的秩序が既に成立しているといい得る場合もあるからである。






条例は民主的基盤をもつ議会によって制定されたものであり、法律に準じる性質を有するから、ほうりつによらずに条例で財産権を制限することが認められます。






2.罪刑法定主義(憲法31条)



憲法31条
何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。




(最大判昭37・5・30)

憲法三一条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法七三条六号但書によつても明らかである。ただ、法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないことは、いうまでもない。ところで、地方自治法二条に規定された事項のうちで、本件に関係のあるのは三項七号及び一号に挙げられた事項であるが、これらの事項は相当に具体的な内容のものであるし、同法一四条五項による罰則の範囲も限定されている。しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。



これも条件付ですが認められます。




3.租税法定主義(憲法84条)


憲法84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。


地方税法3条1項
地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。




条例による課税も認められます。