募集株式について調べてみました。


株主以外の第三者に対する美醜株式および新株予約権の発行に関し、株主の利益を保護するために、会社法はいかなる措置を講じているのかが重要論点です。
募集株式の発行とは、会社成立後に新たに株式を発行またはその有する自己株式を処分することをいい、この発行がなされると、既存の株主に株価下落による経済的損失、会社支配率の低下という不利益があるため、既存株主保護を考慮する必要があるのです。


株式会社は、資金調達目的のほか、企業提携、現経営者の支配権維持などの手段として利用されます。
特に最近では、敵対的企業買収への対抗策として、よくこの方法が用いられています。



まず、会社の支配面の点における株主の利益保護として、結構たくさん条文があります。


37条(発行可能株式総数の定め等)
3項:設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。


113条(発行可能株式総数)
3項:定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。


いずれも既存株主の持株比率の低下に歯止めをかける趣旨のものです。


非公開会社の場合、所有と経営の分離はなされておらず、既存株主の持株比率に対する関心が高いため、募集株式を発行するためには株主総会の特別決議が必要です(199条2項、201条1項、309条2項5号)。


199条(募集事項の決定)
1項:株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
1号 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
2号 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
3号 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
4号 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
5号 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2項:前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3項:第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。


201条(公開会社における募集事項の決定の特則)
1項:第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。


309条(株主総会の決議)
2項:前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
5号 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号及び第二百四条第二項の株主総会



募集株式として譲渡制限株式を発行する会社においては、既存株主にとって、誰が株主になるかも関心が高いため、株主総会の特別決議(取締役会設置会社では取締役会決議)でその割り当てを決定する必要があります(204条2項)。


204条(募集株式の割当て)
1項:株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第二項第二号の数よりも減少することができる。
2項:募集株式が譲渡制限株式である場合には、前項の規定による決定は、株主総会取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。



公開会社においては、所有と経営の分離がなされているため、既存株主は、持株比率に関しては一般的に関心が薄く、会社の資金調達目的が優先されます。よって、発行可能株式総数の範囲であれば、取締役会決議によって、募集株式の発行ができます(201条1項)。


201条(公開会社における募集事項の決定の特則)
1項:第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。


この場合、会社は、株主に対して募集事項を通知ないし公告しなければなりません(201条3項、4項)。
株主に募集事項を知らせることにより、株主がその内容を吟味し、その内容に疑問を生じれば、募集株式の発行の差止請求ができるようにするためです。このことも結構重要です。


201条(公開会社における募集事項の決定の特則)
3項:公開会社は、第一項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。
4項:前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。



経済面における株主の保護についても書きたかったのですが、眠気には勝てません。
おやすみなさい(′∀`)