新株予約権について調べてみました。

新株予約権とは、会社に対して行使することによりその会社の株式の交付を受けることができる権利を言います。


2条(定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
21号 新株予約権 株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいう。


公開会社の場合、新株予約券の発行は、有利な条件・金額による場合を除き、取締役会の決議により決定されます。


240条(公開会社における募集事項の決定の特則)
1項:第二百三十八条第三項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

238条(募集事項の決定)
2項:募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。


募集事項の通知・公告も必要です。


240条(公開会社における募集事項の決定の特則)
2項:公開会社は、前項の規定により読み替えて適用する第二百三十八条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めた場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければならない。
3項:前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。


非公開会社の場合には、原則として株主総会の特別決議または種類株主総会の決議により発行が決定されます。(238条2項4項、309条2項6号、324条2項3号)


238条(募集事項の決定)
2項:募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
4項:種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。


309条(株主総会の決議)
2項:前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
6号 第二百三十八条第二項、第二百三十九条第一項、第二百四十一条第三項第四号及び第二百四十三条第二項の株主総会


324条(種類株主総会の決議)
2項:前項の規定にかかわらず、次に掲げる種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
3号 第二百三十八条第四項及び第二百三十九条第四項の種類株主総会



新株予約権の有利発行についても、募集株式の有利発行に関する規定(199条2項3項)に準じて、規定が設けられています(238条3項)。


199条(募集事項の決定)
2項:前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3項:第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。


238条(募集事項の決定)
3項:次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
1号 第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
2号 第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。



新株予約券の発行差止め請求についても規定があります。


第四款 募集新株予約権の発行をやめることの請求
247条
次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第二百三十八条第一項の募集に係る新株予約権の発行をやめることを請求することができる。
1号 当該新株予約権の発行が法令又は定款に違反する場合
2号 当該新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合



「著しく不公正な方法」の意義については、判例があります。


(東京高裁平17・3・23)「ニッポン放送事件」

会社の経営支配権に現に争いが生じている場面において,株式の敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ,現経営者又はこれを支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的として新株予約権の発行がされた場合には,原則として商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による新株予約権の発行に該当するが,株式の敵対的買収者が,(1)真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず,ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合(グリーンメイラー),(2)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権,ノウハウ,企業秘密情報,主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど,いわゆる焦土化経営を行う目的で株式の買収を行っている場合,(3)会社経営を支配した後に,当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合,(4)会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産,有価証券など高額資産等を売却等処分させ,その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合など,当該会社を食い物にしようとしている場合には,取締役会は,対抗手段として必要性や相当性が認められる限り,経営支配権の維持・確保を主要な目的とする新株予約権の発行を行うことが正当なものとして許される。
乙社が甲社の株式の敵対的買収を行って甲社の経営支配権に現に争いが生じている場面において行われた甲社の新株予約権の発行は,甲社の経営支配権を争う乙社の持株比率を低下させ,現経営者を支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主であるA社による甲社の経営支配権を確保することを主要な目的として行われたものであり,乙社が甲社の事業や資産を食い物にするような目的で株式の敵対的買収を行っている確たる証拠がないという判示の事情の下では,これを正当化する特段の事情がなく,商法280条ノ39第4項,280条ノ10の「著シク不公正ナル方法」による発行に当たる。








判例長い…。
会社法4日連続はやです。
でもまだ最近の超重要判例が残ってます。あと1日は会社法