続々・募集株式について調べてみました。


もう連続会社法にあきてます。条文多いんだよーやだよー。


会社は、201条3項4項の通知・公告のほかに、割当日の公告・通知もしなければなりません。


202条(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)
4項:株式会社は、第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第二号の期日の二週間前までに、同項第一号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
1号 募集事項
2号 当該株主が割当てを受ける募集株式の数
3号 第1項第2号の期日


なお、この規定の趣旨は、株式譲受人で、まだ名義書換をしていない者に名義書換を促すことにあるので、この公告を欠いた新株発行は、取引の安全を重視して、有効とするのが有力です。


会社が法令・定款に違反して、新株を発行してしまった場合の事後措置としては新株発行無効の訴えを会社に提起することができます(828条1項2号、2項2号)。


828条(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
1項:次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
2号 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
2項:次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
2号 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等


(最判平9・1・28)

「商法が、このように、出訴期間及び原告適格の制限があるとともに、認容判決に対世効がある一方で遡及効はない特別の訴えを創設した趣旨は、新株発行は、会社と取引関係に立つ第三者を含めて広い範囲の法律関係に影響を及ぼす可能性があるために、新株発行に無効原因がある場合であっても、その新株発行を前提として形成されていく新たな法律関係をいつまでも覆し得ることとし、あるいは遡及して覆し得ることとするのは相当でなく、また、認容判決の効力が訴訟当事者間においてのみ相対的に生ずるとするのも相当でないことから、新株発行に伴う法律関係を早期かつ画一的に確定することにあると解される。」


株式の発行が存在しない場合には、誰でもいつでも、株式発行不存在確認の訴えを提起できます(829条)。


829条(新株発行等の不存在の確認の訴え)
次に掲げる行為については、当該行為が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
1号 株式会社の成立後における株式の発行
2号 自己株式の処分
3号 新株予約権の発行


判例はさっきと同じです。


(最判平9・1・28)

「商法は、このように新株発行無効の訴えを創設しているが、新株発行不存在確認の訴えについては何ら規定するところがない。しかしながら、新株発行が無効であるにとどまらず、新株発行の実体が存在しないというべき場合であっても、新株発行の登記がされているなど何らかの外観があるために、新株発行の不存在を主張する者が訴訟によってその旨の確認を得る必要のある事態が生じ得ることは否定することができない。このような新株発行の不存在は、新株発行に関する瑕疵として無効原因以上のものであるともいうことができるから、新株発行の不存在についても、新株発行に無効原因がある場合と同様に、対世効のある判決をもってこれを確定する必要がある。したがって、商法の明文の規定を欠いてはいるが、新株発行無効の訴えに準じて新株発行不存在確認の訴えを肯定する余地があり、この場合、新株発行無効の訴えに対比して出訴期間、原告適格等の訴訟要件が問題となるが、この訴えは少なくとも、新株発行無効の訴えと同様に、会社を被告としてのみ提起することが許されるものと解すべきである。」



公正さを欠く金額が払い込まれた場合、会社の存立基盤が危うくなり、会社債権者や株主の利益が害されるおそれがあります。そこで、各種の法規制が設けられています。


212条(不公正な払込金額で株式を引き受けた者等の責任)
1項:募集株式の引受人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める額を支払う義務を負う。
1号 取締役(委員会設置会社にあっては、取締役又は執行役)と通じて著しく不公正な払込金額で募集株式を引き受けた場合 当該払込金額と当該募集株式の公正な価額との差額に相当する金額
2号 第二百九条の規定により募集株式の株主となった時におけるその給付した現物出資財産の価額がこれについて定められた第百九十九条第一項第三号の価額に著しく不足する場合 当該不足額


責任追及には責任追及等の訴え(株主代表訴訟)が適用されます(847条1項)。


847条(責任追及等の訴え)
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。


違法な募集株式により株主等に損害が出た場合には、取締役は対第三者責任を負うことになります(429条1項)。


429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
1項:役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。








やっと募集株式については一通り終わりです。
でもまだ、新株予約権の発行という類似した論点が残ってます。
会社嫌い。゜(PД`q)゜。