留置権について調べてみました。

担保物権は苦手なんです。漠然としていると思うのはわたしだけでしょうか。
留置権民法の7章、295条以下に規定されています。


295条(留置権の内容)
1項:他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2項:前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。


問題とかでは、屋根を直した賃借人が、その必要費を理由に、賃貸借契約終了後も、建物の明け渡しを拒めるかどうか…のような形でよく出題されます。
意外に判例があったので、とりあえず並べてみました。


まず、造作買取請求権を被担保債権として家屋を留置しうるかについて。


(最判昭29・1・14)

借家法第五条による造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であつて、建物に関して生じた債権ではない。


必要費の場合は、留置権は成立しますが(196条ですぐにでも請求できるので)、賃貸借契約が終了した後に、必要費を払った場合に留置権が成立するかには295条2項との関係で、問題があります。


(最判昭46・7・16)

「亡Aが、本件建物の賃貸借契約が解除された後は右建物を占有すべき権原のないことを知りながら不法にこれを占有していた旨の原判決の認定・判断は、挙示の証拠関係に徴し首肯することができる。そして、Aが右のような状況のもとに本件建物につき支出した有益費の償還請求権については、民法二九五条二項の類推適用により、上告人らは本件建物につき、右請求権に基づく留置権を主張することができないと解すべきである。」


占有者が悪意の場合はやっぱり留置権は成立しないようです。


(最判昭51・6・17)

「国が自作農創設特別措置法に基づき、農地として買収したうえ売り渡した土地を、被売渡人から買い受けその引渡を受けた者が、土地の被買収者から右買収・売渡処分の無効を主張され所有権に基づく土地返還訴訟を提起されたのち、右土地につき有益費を支出したとしても、その後右買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により当初に遡つて無効とされ、かつ、買主が有益費を支出した当時右買収・売渡処分の無効に帰するかもしれないことを疑わなかつたことに過失がある場合には、買主は、民法二九五条二項の類推適用により、右有益費償還請求権に基づき土地の留置権を主張することはできないと解するのが相当である。」


善意有過失のものに対する留置権を否定しています。
もっとも、善意有過失のものについて、常に留置権の成立を否定するものではなく、公平の観念に基づいて、事案ごとに検討すべきといわれています。


295条1項の「物に関して生じた債権」といえるかについても問題となります。
判例の事案は、甲所有の物を買受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合に丙の甲に対する物の引渡請求と甲の留置権が認められるかというものです。


(最判昭47・11・16)

「残代金債権は本件土地建物の明渡請求権と同一の売買契約によつて生じた債権であるから、民法二九五条の規定により、上告人はAに対し、残代金の弁済を受けるまで、本件土地建物につき留置権を行使してその明渡を拒絶することができたものといわなければならない。ところで、留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても、債権者がその留置権を主張しうることは、留置権が物権であることに照らして明らかであるから、本件においても、上告人は、Aから本件土地建物を譲り受けた被上告人に対して、右留置権を行使することをうるのである。もつとも、被上告人は、本件土地建物の所有権を取得したにとどまり、前記残代金債務の支払義務を負つたわけではないが、このことは上告人の右留置権行使の障害となるものではない。」






判例を検索したりするうちに、こんなページも見つけました!!!!まとまってる!!!!
http://www2.ttcn.ne.jp/~kanrishi-g/min/hanrei/h0295.html