文書偽造罪について調べてみました。

 まず定義から。


159条「偽造」(有形偽造)
 作成名義人でないものが、他人名義を冒用して文書を作成する行為。文書の名義人と作成者との人格の同一を偽ること。
「文書」
 文字又は可読的符号を用い、ある観念を表示した物体をいい、その表示の内容が法律上又は社会生活上、重要な事項について証拠となりうるもの。
「事実証明に関する文書」実社会生活に交渉を有する事項を証明する文書。
「権利・義務に関する文書」権利又は義務の発生・存続・変更等の法律効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする文書。
161条「行使」
 偽造文書を真正なものとして他人に認識させ、または認識しうる状態に置くこと。
「名義人」文書に表示された意識内容の主体。
「作成者」文書の内容を表示させた意思・観念の主体。

Cf.名義人の承諾があった場合には、名義人意思・観念の主体として作成者となる。

変造―真正に成立した物(通貨、有価証券、文書)につき不正に手を加えて異なる価値を作り出す行為。ただし、真正に成立した物であっても、本質的な部分を越える改変であって全く異なる価値を作り出したと評価される場合は変造ではなく偽造に該当する。



 いろいろ定義はあるようですが、いちおうこれで対処しています。 

 ちなみに「文書」の「可読的符号」とは、そのまま記号のことなのですが、たとえば、マークシート式の入試問題の答案用紙も、文書偽造罪の客体となるとするのに便利です。
 
 入試問題で有名な判例としては、最決平6・11・29があります。
 「本件入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、「社会生活に交渉を有する事項」を証明する文書に当たると解するのが相当である。」
 
 
 また、文書の「自署性」が問題となった有名な判例では、最決昭56・4・8があります。
 「交通反則切符中の供述書を他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する。」
 交通事件原票中の供述書は私文書らしいです。