当事者訴訟について調べてみました。

行政訴訟法4条(当事者訴訟)
この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。



当事者訴訟には形式的当事者訴訟実質的当事者訴訟(公法上の当事者訴訟)の2種類があります。



形式的当事者訴訟とは、4条前段の「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」をいいます。
大部分が損失補償請求にかかわるもので、たとえば、土地収用法は、収用委員会が裁定した保障金額に不服がある場合は、被収容者と企業者の当事者間で決着させるものとしています。
これは本来なら収用委員会の裁決の取消訴訟を提起して問題解決を図るものだが、土地収用法が当事者間で争われるものとしています。

つまり、形式的当事者訴訟は、行政庁の処分または裁決の取消をもとめる抗告訴訟であり、形式的に当事者訴訟とされたものなのです。

行政庁がこの形式的当事者訴訟を提起することができる処分または裁決を書面でする場合には、その相手方に対し、書面で教示することが義務付けられています。



行政事件訴訟法46条(取消訴訟等の提起に関する事項の教示)
3項 行政庁は、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものを提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
1 当該訴訟の被告とすべき者
2 当該訴訟の出訴期間




実質的当事者訴訟(公法上の当事者訴訟)とは、4条後段の「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」をいいます。
抗告訴訟が行政庁の公権力の行使・不行使の適否を争う訴えであるのに対し、実質的当事者訴訟(公法上の当事者訴訟)は、権利主体が対等な立場で権利関係を争う訴訟です。
抗告訴訟民事訴訟と本質・構造が違っていますが、実質的当事者訴訟は通常の民事訴訟と本質・構造が同じです。
たとえば、公務員の地位確認訴訟や、給与支払い請求が実質的当事者訴訟にあたります。




行政事件訴訟法40条(出訴期間の定めがある当事者訴訟)
1項 法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であつても、これを提起することができる。



当事者訴訟の審理手続は、原則として民事訴訟の例によりますが、取消訴訟に関する規定のうち、行政庁の訴訟参加、職権証拠調べ、判決の拘束力などの規定が準用されています。



行政事件訴訟法41条(抗告訴訟に関する規定の準用)
1項 第23条、第24条及び第35条の規定は当事者訴訟について、第23条の2の規定は当事者訴訟における処分又は裁決の理由を明らかにする資料の提出について準用する。
2項 第13条の規定は、当事者訴訟とその目的たる請求と関連請求の関係にある請求に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合における移送に、第16条から第19条までの規定は、これらの訴えの併合について準用する。




(参考条文)

行政事件訴訟法23条(行政庁の訴訟参加)
1項 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
2項 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければならない。
3項 第1項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第45条第1項及び第2項の規定を準用する。


行政事件訴訟法24条(職権証拠調べ)
裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。


行政事件訴訟法35条(訴訟費用の裁判の効力)
国又は公共団体に所属する行政庁が当事者又は参加人である訴訟における確定した訴訟費用の裁判は、当該行政庁が所属する国又は公共団体に対し、又はそれらの者のために、効力を有する。


行政事件訴訟法23条の2(釈明処分の特則)
1項 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
1 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料(次項に規定する審査請求に係る事件の記録を除く。)であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
2 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
2項 裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があつたときは、次に掲げる処分をすることができる。
1 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、当該審査請求に係る事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
2 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。


行政事件訴訟法13条(関連請求に関わる訴訟の移送)
取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。ただし、取消訴訟又は関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。
1 当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求
2 当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求
3 当該処分に係る裁決の取消しの請求
4 当該裁決に係る処分の取消しの請求
5 当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求
6 その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求


行政事件訴訟法16条(請求の客観的併合)
1項 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。
2項 前項の規定により訴えを併合する場合において、取消訴訟の第1審裁判所が高等裁判所であるときは、関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならない。被告が異議を述べないで、本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、同意したものとみなす。


行政事件訴訟法17条(共同訴訟)
1項 数人は、その数人の請求又はその数人に対する請求が処分又は裁決の取消しの請求と関連請求とである場合に限り、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。
2項 前項の場合には、前条第1項の規定を準用する。


行政事件訴訟法18条(第三者による請求の追加的併合)
三者は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、その訴訟の当事者の一方を被告として、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟高等裁判所に係属しているときは、第16条第2項の規定を準用する。


行政事件訴訟法19条(原告による請求の追加的請求)
1項 原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟高等裁判所に係属しているときは、第16条第2項の規定を準用する。
2項 前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法(平成8年法律第109号)第143条の規定の例によることを妨げない。






試験では、よく地位確認訴訟を問われていたような気がします。