報道と名誉・プライバシーの関係について調べてみました。


なんで表現の自由関連ばっかかというと、テストが近いからです。
テストがやばいと卒業できないのです。


メディアの報道によって、個人の名誉・プライバシーが侵害されてしまうこともありますが、どっちも重要な憲法上の権利。一概に「これはプライバシーを侵害している報道だから差止め!!!!」というわけにもいかないです。


まず、名誉は名誉毀損罪の規定により、刑事法上保護されています。


刑法230条(名誉毀損)
1項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。


不法行為責任によって民事法上も保護されています。


民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。


ここでいう名誉とは、主観的な名誉感情ではなく、社会的名誉とされています。
詳しくは、刑法の日記参照。
http://d.hatena.ne.jp/ayaayako/20071115/1195141064


表現の自由も重要な憲法上の権利であるため、名誉侵害の責任をめぐっては免責の法理が法に規定されていたり、判例で展開されています。刑法の条文がまず有名どこです。


刑法230条の2(公共の利害に関する場合の特例)
1項:前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2項:前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3項:前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。


民事とあわせて判例もあります。
「相当の理由」がポイントのようです。


(最判昭41・6・23)

「 民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもつぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法二三〇条の二の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。
 本件について検討するに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)によると、上告人は昭和三〇年二月施行の衆議院議員の総選挙の立候補者であるところ、被上告人は、その経営する新聞に、原判決の判示するように、上告人が学歴および経歴を詐称し、これにより公職選挙法違反の疑いにより警察から追及され、前科があつた旨の本件記事を掲載したが、右記事の内容は、経歴詐称の点を除き、いずれも真実であり、かつ、経歴詐称の点も、真実ではなかつたが、少くとも、被上告人において、これを真実と信ずるについて相当の理由があつたというのであり、右事実の認定および判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、十分これを肯認することができる。
 そして、前記の事実関係によると、これらの事実は、上告人が前記衆議院議員の立候補者であつたことから考えれば、公共の利害に関するものであることは明らかであり、しかも、被上告人のした行為は、もつぱら公益を図る目的に出たものであるということは、原判決の判文上十分了解することができるから、被上告人が本件記事をその新聞に掲載したことは、違法性を欠くか、または、故意もしくは過失を欠くものであつて、名誉棄損たる不法行為が成立しないものと解すべきことは、前段説示したところから明らかである。
 原判決は、その判文中にこれと異なる説示をした部分がないでもないが、本件記事の新聞の掲載について、被上告人の不法行為の成立を否定しているので、結局、原判決の判断は、中正当というべきである。」
「 原判決は、国会議員ないしその候補者については、その適否の判断にはほとんど全人格的な判断を必要とし、所論の事実もその適否の判断に関係のある事項であつて上告人の前科に関する本件記事が真実である以上その事実の公表は許される旨判示しているのであり、当審も上告理由第一点において判示したように、右判断を正当と考える。所論は、独自の見解に立ち、原判決を攻撃するものであつて、採用しがたい。」


(最大判昭44・6・25)

「刑法二三〇条ノ二の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法二一条による正当な言論の保障との調和をはかつたものというべきであり、これら両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。これと異なり、右のような誤信があつたとしても、およそ事実が真実であることの証明がない以上名誉毀損の罪責を免れることがないとした当裁判所の前記判例(昭和三三年(あ)第二六九八号同三四年五月七日第一小法廷判決、刑集一三巻五号六四一頁)は、これを変更すべきものと認める。したがつて、原判決の前記判断は法令の解釈適用を誤つたものといわなければならない。
 ところで、前記認定事実に相応する公訴事実に関し、被告人側の申請にかかる証人Cが同公訴事実の記事内容に関する情報を和歌山市役所の職員から聞きこみこれを被告人に提供した旨を証言したのに対し、これが伝聞証拠であることを理由に検察官から異議の申立があり、第一審はこれを認め、異議のあつた部分全部につきこれを排除する旨の決定をし、その結果、被告人は、右公訴事実につき、いまだ右記事の内容が真実であることの証明がなく、また、被告人が真実であると信ずるにつき相当の理由があつたと認めることはできないものとして、前記有罪判決を受けるに至つており、原判決も、右の結論を支持していることが明らかである。
 しかし、第一審において、弁護人が「本件は、その動機、目的において公益をはかるためにやむなくなされたものであり、刑法二三〇条ノ二の適用によつて、当然無罪たるべきものである。」旨の意見を述べたうえ、前記公訴事実につき証人Cを申請し、第一審が、立証趣旨になんらの制限を加えることなく、同証人を採用している等記録にあらわれた本件の経過からみれば、C証人の立証趣旨は、被告人が本件記事内容を真実であると誤信したことにつき相当の理由があつたことをも含むものと解するのが相当である。」








プライバシーについてはまた明日。