死者を被告とする訴訟について調べてみました。


水曜・木曜のテストが一息ついたので。



1回やっておいてもついつい忘れてしまうテーマです。適当にまとめてみます。


どんな問題かというと、Aが、すでに死亡しているBに対して訴えを提起し、Bの相続人であるCが訴訟追行していたという場合、だれが被告となるかというやつです。


まず、訴状から被告が誰かみてみると、通説たる実質的表示説からは、被告はBとなります。
実質的表示説については前の日記をご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/ayaayako/20071106/1194360181


二当事者対立構造が生じるのは訴状が被告に到達した時です。訴状が到達することにより、訴訟が継続したことになります。


そして、訴訟継続時に当事者が実在していることは訴訟要件です。死者には当事者能力がなく(28条)、二当事者対立構造が崩れるからです。
当事者能力についても、前の日記でどうぞ。
http://d.hatena.ne.jp/ayaayako/searchdiary?word=%c5%f6%bb%f6%bc%d4%c7%bd%ce%cf


28条(原則)
当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。


ということで、今回の訴訟は被告が死人なので訴えは却下されることとなります。このことを見過ごして本案判決がなされ確定しても、その判決は無効となります。


しかし、すでにAとCがなした訴訟行為が無駄になり、訴訟経済を害し、当事者の利益にも反します。


そこで、当事者承継(124条1項1号)の類推適用でどうにかしようとする説が有力です。


124条(訴訟手続の中断及び受継)
1項:次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一 当事者の死亡
相続人、相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者
二 当事者である法人の合併による消滅
合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
三 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅
法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
四 次のイからハまでに掲げる者の信託に関する任務の終了
当該イからハまでに定める者
 イ 当事者である受託者 新たな受託者又は信託財産管理者若しくは信託財産法人管理人
ロ 当事者である信託財産管理者又は信託財産法人管理人 新たな受託者又は新たな信託財産管理者若しくは新たな信託財産法人管理人
ハ 当事者である信託管理人 受益者又は新たな信託管理人
五 一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失
同一の資格を有する者
六 選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失
選定者の全員又は新たな選定当事者


つまり、Aが訴訟代理人を選任した後、または裁判所に訴状を発送した後にBが死亡した時には、潜在的に訴訟継続が生じていたものと考えて、訴訟継続後の当事者の死亡の場合と同じように、Cが訴訟を継承できるとします。


なので、Cが新当事者となり、中断した訴訟手続は、当事者の受継申立(126条類推適用)または裁判所の執行命令(129条)により再開します。


126条(相手方による受継申立て)
訴訟手続の受継の申立ては、相手方もすることができる。


129条(職権による続行命令)
当事者が訴訟手続の受継の申立てをしない場合においても、裁判所は、職権で、訴訟手続の続行を命ずることができる。


また、このような訴訟継続が生じていなかった場合にも、相続人Cが訴状を受領し、Bの名で訴訟追行しているときは任意的当事者変更によって、当事者をCに変更し、それまでの訴訟追行の結果をCに及ぼすことができると考えます。
Cにきちんと手続保障が与えられ、当事者として表示されたBの判決を受ける権利を害することもないからです。


なお、任意的当事者変更は、新訴の提起と旧訴の取り下げがあったことと解されますが、Cによる訴訟追行があったと認められるような場合には、Cは、信義則上、従来の訴訟追行の結果を争うことはできません。Cにはきちんと手続保障が与えられているからです。


判例もあります。


事実の概要から。


「本件記録によれば、本件訴訟の経過は次のとおりである。即ち、(一)被上告人(原告)が本件訴訟の訴状を第一審裁判所に提出した日時は、昭和三七年三月一三日であり、第一審裁判所の裁判長が第一回口頭弁論期日を指定したのは、同年三月一四日である。(2)第一審裁判所が本件訴状と同三七年四月四日の第一回口頭弁論期日の呼出状とをあわせて被告たるDあてに送達手続をとつたところ同年三月二三日送達された。(3)しかし、被告たるDは、同年三月一六日死亡していたから、第一審裁判所は、右第一回口頭弁論期日を同被告の関係で開かず、口頭弁論期日をおつて指定とする旨の措置をとつた。(4)その後、同年九月一三日に、右Dの相続人たる上告人A、同B、同Cは、弁護士甲斐庸生を訴訟代理人に選任したうえ右Dの訴訟を承継する旨の申立を第一審裁判所に対してしたので、第一審裁判所は右受継を許可するとともに同三七年一〇月三日の口頭弁論期日を開いた。(5)第一審裁判所は、その後一〇回の口頭弁論期日を開き、その審理結果にもとづき、同三八年一二月三日被上告人勝訴の判決をした。そこで、上告人A、同B、同Cほか六名の共同訴訟人は、被上告人を相手方として、控訴の申立をした。(6)第二審裁判所は、右控訴の申立にもとづき、前後三回の口頭弁論期日を開き、その審理結果にもとづき、同三九年九月九日上告人らの控訴を棄却する旨の判決をした。(7)そこで、上告人A、同B、同Cほか六名は、被上告人を相手方として、上告を申し立てた。(8)前記第一、二審の訴訟においては、被告たるDの訴訟を上告人A、同B、同Cにおいて承継したことについては、右上告人三名からはもちろん、被上告人(原告)からもなんらの異議がでず、ただ被上告人の本訴請求の当否のみが争われてきた。以上の事実が認められる。」


(最判昭41・7・14)

以上の訴訟の経過にもとづいて、本件を検討するに、上告人A、同B、同Cの三名は、前記のとおり、みずから被告たるDの訴訟を承継する手続をとりこれを承継したものとして、本件訴訟の当初からなんらの異議を述べずにすべての訴訟手続を遂行し、その結果として、被上告人の本訴請求の適否について、第一、二審の判断を受けたものである。このように、第一、二審を通じてみずから進んで訴訟行為をした前記上告人三名が、いまさら本件訴訟の当事者(被告)が死者であるDであつたとしてみずからの訴訟行為の無効を主張することは、信義則のうえから許されないものと解するのが相当である。


相続人が上告審で、死者を被告とした訴訟であり不適法であるとすることは信義則に反する…当たり前のようなかんじです。







月曜にテストラスト!!!
土日は勉強がんばります!!!!!