ロースクール受験のために司法試験の過去問をやってみたりしています。

共同被告人の証人適格。(昭和47年度第2問)

一.共同被告人とは、被告人を異にする複数の事件が併合された場合における、その数人の被告人のことをいう。
この点、143条は「何人でも証人として尋問することができる」としている。
しかし、共同被告人も被告人なので、当事者たる被告人に証人適格を認めうるかが問題となる。
二.まず、前提として、被告人の証人適格を認めうるか。
確かに、証明力の強い証言の形で自己に有利な供述をさせることは被告人の利益になる。
しかし、被告人に証人として証言義務を負わせるのは、黙秘権(憲法38条1項、法311条)侵害の疑いがある。
また、現行法は、被告人からの供述採取につき、被告人質問(311条3項)の制度を採用しており、証人尋問は予定していない。
よって、本人がすすんで証人になることを求めた場合であっても、証人適格は認められないと解すべきである。
三.では、共同被告人に証人適格を認めうるか。
確かに、一方当事者から見れば相被告人は第三者にあたる。
しかし、同じ手続で供述義務に差異のある2つの地位を認めることは、被告人の心理に混乱を引き起こすおそれがあり妥当でない。
よって、手続を分離しないままでの共同被告人の証人適格は否定すべきである。
この場合、形式的な手続の分離によって共同被告人を証人とし強制的な供述を獲得した上、再び手続を併合してその供述を共同被告人自身に対する不利益な証拠として使用することを認めることは、共同被告人の黙秘権を侵害し妥当でない。
そこで、便宜的な分離ではなく、裁判官を異にする永続的な分離がなされた場合に限り共同被告人の証人適格を認めるべきであると解する。
以上