ロースクール受験のために司法試験の過去問をやってみたりしています。


法定代理人と訴訟代理人の差異を説明せよ。(昭和43年度第1問)

一.総論
1.法定代理人とは、その地位が本人の意思に基づかない代理人のことをいう。
実体法上の代理人(28条)、訴訟法上の特別代理人(35条、236条)がその例として挙げられる。
自分だけでは有効に訴訟追行が出来ない訴訟無能力者について、その能力を補充することをその趣旨とする。
2.他方、訴訟代理人とは、本人の意思によって包括的な訴訟追行のための代理権を与えられた代理人をいう。
訴訟委任に基づく訴訟代理人(54条)、法令上の訴訟代理人(支配人、商法38条1項)がその例として挙げられる。
訴訟無能力者ではないが、訴訟追行は煩雑で経験を要するものであることから、当事者の訴訟活動を拡大することを趣旨とする。
3.両者は、訴訟上の代理人である点で共通する。
よって、どちらも、当事者の名で、当事者に代わって、自己の意思決定に基づいて訴訟行為をなし、または自己に向けられた訴訟行為を受領する。
そのほか、代理権を書面で証明すること、双方代理が禁止されること、無権代理には追認が可能なこと、代理権の消滅は通知により効力が発生することがする。
しかし、法定代理人は、本人が訴訟追行できないため、本人の身代わり的地位にあるのに対し、訴訟代理人は、本人が自ら訴訟追行をなし得るため、第三者の立場に近い点で異なる。
二.訴訟の各場面における具体的な差異
1.訴え提起段階
法定代理人は、訴状の必要的記載事項(133条2項1号)であるのに対し、訴訟代理人にはそのような規定はない。
2.審理段階
(1)訴訟追行
法定代理人は、
①本人から全く干渉を受けずに訴訟追行をなしうる(57条参照)。
②訴訟代理人を選任して訴訟を追行してもらうことも可能(55条2項5号参照)。
③裁判所は送達(102条1項)、本人に代わる出頭の命令(151条1項1号)を法定代理人にしなければならない。
他方、訴訟代理人は、
①本人は訴訟代理人を選任しても、自ら訴訟行為をしたり、又は受けることができる。
②本人には訴訟代理人による事実上の陳述についての更正権も認められている(57条)。
(2)代理人死亡のときの処理
法定代理人が死亡したり、代理権を喪失したときは原則として訴訟手続は中断される(124条1項3号)。
他方、訴訟代理人が死亡したり、代理権を喪失した場合でも本人が訴訟を追行できるので、訴訟手続は中断されない(124条2項)。

(3)証人適格
法定代理人は、本人の身代り的地位にあるため、証人適格なく、尋問は当事者尋問(211条)による。
他方、訴訟代理人には証人適格があり、また鑑定人にもなれる。
(4)代理権の範囲及び消滅
法定代理人は、民法などの実体法が規定しているところによる(28条、32条、民法111条等)。
他方、訴訟代理人は、
①原則として弁護士であるため、代理権の範囲は制限できない(55条3項)。
②但し、和解など本人にとって重要な結果を生じる事項については特別の委任が必要となる(55条2項)。
③代理権の消滅についても当事者の死亡等の事由により当然には消滅しない(58条)。
3.判決段階
法定代理人は、判決書の必要的記載事項(253条1項5号)であるが、訴訟代理人にはそのような規定がない。
以上





基本的なことほど忘れやすい気がします。
訴訟能力とか当事者能力、口頭主義、双方審尋主義…。ど忘れ激しいです。