取締役会の授権を欠く代表取締役の行為の効力について調べてみました。


 
 取締役会による授権を欠く場合の代表取締役の行為の効力をどのように考えるべきか、まとめてみました。



 取締役会の授権を欠く代表取締役の行為は一種の無権代表なので、無効となるのが原則です。
 しかし、取引の安全など他の利益にも配慮する必要があるので、事例ごとに会社の利益を比較較量して決しなければなりません。


 まず、総会の招集、直接取引など、会社内の事項に留まる場合は、原則どおりに無効と考えます。この場合、三者の利益を考慮する必要がないからです。


 他方、重要な財産など法が取締役会決議を必要としている(362条4項)のにこれを欠く場合は、相手方の利益もさることながら、会社の利益を保護する必要も高いので、相手方が決議を欠くことを知り、または知ることができた場合には無効になると考えます(民法93条但書類推適用)


 さらに、内部的な規制に反する取引については内部事項であり、決議の不存在が相手にとって判明しにくいことを考慮する必要があります。


 よって、相手方が悪意の場合に限り、会社は取引の無効を主張できることになります(349条5項)承認がない利益相反取引も内部事項といえるので、同様に考えることになります。


 最後に募集株式、社債の発行の場合多くの利害関係人が発生することから、その効力を安定させる必要が高いです。

 
 そこで、重大な法令・定款違反がない限り、その効力は否定されません
 ここで、取締役会の決議を欠くことは手続き上の違反があるに過ぎないので、重大な法令・定款違反があるとは言えません。取締役会の決議を欠いた募集株式、社債の発行の効力は有効になります。