口頭弁論に関する基本原則について調べてみました。


ダブスクの答案練習で出題されて、固まった記憶があります。
基本的なことほど見落としがちです。






1.公開主義(憲法82条)

一般国民が傍聴しうる状態で訴訟の審理及び判決を行う建前のこと。一般公開主義。
裁判の公正を担保し、裁判に対する国民の信頼を確保する趣旨。
当事者公開主義(憲法32条)は、双方審尋主義の現れである。

一般公開の原則を尊重するため、訴訟記録の閲覧等が規定されている(91条)。

公開主義の原則に反することは、上告理由になる(312条2項5号)。




2.双方審尋主義(憲法32条憲法14条)

当事者双方に、それぞれ主張を述べる機会を平等に保障する建前。武器対等の原則。
口頭弁論は、当事者を対席させ弁論及び証拠調べを行うものであり、双方審尋の実現する方式である。

双方審尋主義の具体的な現れとして、当事者の訴訟追行を保障するため中断・中止の制度がある(124条以下)
代理すら保障されない判決は、上告理由(312条2項4号)、再審事由(338条1項3号)となる。




3.口頭主義(87条1項)

弁論及び証拠調べを口頭で行う建前のこと。

書面より口頭の方が、裁判官の受ける印象が鮮明であり(口調・態度・表情等)、事実の真相がつかみやすいこと、公開主義・直接主義とともに成り立ちやすい。書面主義に対立する概念。

釈明(149条)に便利で、活発な審理を期待できる。

もっとも、口頭弁論には、主張証拠脱落の危険性、理解の困難性、記憶喪失などの短所があるため、書面の利用により、口頭主義を補完する必要もある。
たとえば、訴状(133条)、判決書(252条)等重要な訴訟行為に書面を要求し、また準備書面により口頭弁論の準備をさせる(161条)。


(参考条文)

87条(口頭弁論の必要性)
1項:当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。




4.直接主義(249条1項)

弁論の聴取や証拠調べを、判決をする裁判官が自ら行う建前。事案に即した判決を期待できる。
間接主義(他のものの結果の報告に基づいて裁判をすることを認める建前)に対立する概念。
審理担当裁判官が判決担当裁判官でもあるということ。

自由心証主義(247条)の前提として、裁判官が証拠方法等を直接見聞することが必要となる。
口頭主義と両立しやすい(必然性はない)。

例外あり。
ア 弁論の更新(249条2項、その例外として249条3項(控訴審の場合には適用されず))
弁論の更新がなされない時は、直接主義違反として、絶対上告理由(312条2項1号)、再審事由(338条1項1号)になる。

イ 受命・受託裁判官による証拠調べ
国内の場合→185条、195条(限定)
国外の場合→184条(直接主義は困難なことによる)


(参考条文)

249条(直接主義)
1項:判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。
2項:裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
3項:単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。


185条(裁判所外における証拠調べ)
1項:裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる。この場合においては、合議体の構成員に命じ、又は地方裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる。
2項:前項に規定する嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所又は簡易裁判所において証拠調べをすることを相当と認めるときは、更に証拠調べの嘱託をすることができる。


195条(受命裁判官等による証人尋問)
裁判所は、次に掲げる場合に限り、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所外で証人の尋問をさせることができる。
1号:証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき、又は正当な理由により出頭することができないとき。
2号:証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用又は時間を要するとき。
3号:現場において証人を尋問することが事実を発見するために必要であるとき。
4号:当事者に異議がないとき。


184条(外国における証拠調べ)
1項:外国においてすべき証拠調べは、その国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してしなければならない。
2項:外国においてした証拠調べは、その国の法律に違反する場合であっても、この法律に違反しないときは、その効力を有する。





意義と効果(上告事由、再審事由になる等)が重要だそうです。