学習指導要領について調べてみました。


ここのところの教育シリーズ?も、これで一段落です。
憲法でも行政法でも重要です。



(最判昭51・5・21)「旭川学テ事件」

「文部大臣は、学校教育法三八条、一〇六条による中学校の教科に関する事項を定める権限に基づき、普通教育に属する中学校における教育の内容及び方法につき、上述のような教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定することができるものと解すべきところ、本件当時の中学校学習指導要領の内容を通覧するのに、おおむね、中学校において地域差、学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準と考えても必ずしも不合理とはいえない事項が、その根幹をなしていると認められるのであり、その中には、ある程度細目にわたり、かつ、詳細に過ぎ、また、必ずしも法的拘束力をもつて地方公共団体を制約し、又は教師を強制するのに適切でなく、また、はたしてそのように制約し、ないしは強制する趣旨であるかどうか疑わしいものが幾分含まれているとしても、右指導要領の下における教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や、地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており、全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格をもつものと認められるし、また、その内容においても、教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような点は全く含まれていないのである。それ故、上記指導要領は、全体としてみた場合、教育政策上の当否はともかくとして、少なくとも法的見地からは、上記目的のために必要かつ合理的な基準の設定として是認することができるものと解するのが、相当である。」



(最判平2・1・18)「伝習館高校事件」

「高等学校学習指導要領は法規としての性質を有するとした原審の判断は、正当として是認することができ、右学習指導要領の性質をそのように解することが憲法23条、26条に違反するものでないことは、最高裁昭和51年5月21日大法廷判決の趣旨とするところであり、原判決に違法はない。」



最近では、学習指導要領の、国旗・国歌に関する部分が問題になった判例もあります。
学習指導要領の法的拘束力についても言及しています。
長いです。



(東京地判平18・9・21)

「(3) 学習指導要領の国旗・国歌条項に基づく義務について
ア まず最初に,原告ら教職員が,学習指導要領の国旗・国歌条項に基づき,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負っているか否かについて検討する。この点に関し,教育基本法10条1項が「教育は,不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」と規定し,同条2項が「教育行政は,この自覚のもとに,教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない。」と規定していることとの関係で,学習指導要領の国旗・国歌条項が法的効力を有しているのか否かが問題となる。
イ 学習指導要領の法的効力について国は,憲法上,適切な教育政策を樹立,実施する権能を有し,国会は,国の立法機関として,教育の内容及び方法について,法律により,直接又は行政機関に授権して必要かつ合理的な規制を施す権限を有している。のみならず,国は,子どもの利益のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益のため,必要かつ合理的な規制を施すことが要請される場合もあり得るのであって,国会が教育基本法10条においてこのような権限の行使を自己限定したものと解することは困難である。むしろ,教育基本法10条は,国の教育統制権能を前提としつつ,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,その整備確立のための措置を講ずるに当たり,教育の自主性尊重の見地から,これに対する不当な支配とならないようにすべきとの限定を付したものと解するのが相当である。したがって,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められる措置は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,教育基本法10条に反しないものと解するのが相当である。そして,文部科学大臣は,前記争いのない事実等(2)イのとおり,学校教育法43条,73条に基づき,高等学校及び盲学校,ろう学校及び養護学校高等部の教科に関する事項を定める権限を有しており,上記高等学校等における教育内容及び方法について,それぞれ教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準として,学校教育法施行規則57条の2,73条の10に基づき,学習指導要領を定めている。したがって,このような目的のもとに定められた学習指導要領は,原則として法規としての性質を有するものと解するのが相当である。もっとも,国の教育行政機関が,法律の授権に基づいて普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,上記のとおり教育の自主性尊重の見地のほか,教育に関する地方自治の原則をも考慮すると,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準に止めるべきものと解するのが相当である。そうだとすると,学習指導要領の個別の条項が,上記大綱的基準を逸脱し,内容的にも教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制するようなものである場合には,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして,法規としての性質を否定するのが相当である。(最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁,最一判平成2年1月18日集民159号1頁参照)
ウ これを学習指導要領の国旗・国歌条項についてみてみると,同条項は,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,生徒に国旗,国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることが重要なことであること,入学式,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活への動機付けを行い,集団への所属感を深めるうえでよい機会となることから,このような入学式,卒業式等の意義を踏まえたうえで,これらの式典において,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するとの趣旨で設けられた規定と解される(甲276,乙18参照)。このような学習指導要領の国旗・国歌条項の趣旨に照らすと,国旗,国歌に関する定めは,その性質上,全国的になされることが望ましいものといえ,教育における機会均等の確保と全国的な一定の教育水準の維持という目的のために,国旗・国歌条項を学習指導要領の一部として規定する必要性はあるというべきである。そうだとすると,学習指導要領の国旗・国歌条項が,教育の自主性尊重,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱するものでなく,内容的にも一方的な一定の理論や理念を生徒に教え込むことを教職員に強制するものでない限り,法的効力を有すると解するのが相当である。
エ そこで,学習指導要領の国旗・国歌条項をみてみるに,同条項は,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と規定するのみであって,それ以上に国旗,国歌についてどのような教育をするかについてまでは定めてはいない。また,学習指導要領の国旗・国歌条項は,国旗掲揚・国歌斉唱の具体的方法等について指示するものではなく,入学式,卒業式のほかにどのような行事に国旗掲揚・国歌斉唱を行うかについて,各学校に指示するものでもなく,国旗掲揚・国歌斉唱を実施する行事の選択,国旗掲揚,国歌斉唱の実施方法等については,各学校の判断に委ねており,その内容が一義的なものになっているということはできない。さらに,学習指導要領の国旗・国歌条項は,教職員が生徒に対して日の丸,君が代を巡る歴史的事実等を教えることを禁止するものではなく,教職員に対し,国旗,国歌について一方的な一定の理論を生徒に教え込むことを強制するものとはいえない。
オ 以上によれば,学習指導要領の国旗・国歌条項は,前記イの学習指導要領全般の法的効力に関する基準に照らしても,法的効力を有すると解するのが相当である。もっとも,学習指導要領の国旗・国歌条項の法的効力は,前記ウのとおり,その内容が教育の自主性尊重,教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を定めるものであり,かつ,教職員に対し一方的な一定の理論や理念を生徒に教え込むことを強制しないとの解釈の下で認められるものである。したがって,学習指導要領の国旗・国歌条項が,このような解釈を超えて,教職員に対し,入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務を負わせているものであると解することは困難である。
カ 小括
以上の検討結果によれば,学習指導要領の国旗・国歌条項は,法的効力を有しているが,同条項から,原告ら教職員が入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務までを導き出すことは困難であるというべきである。」





色付けしたのは、個人的に重要かなと思ったところです。
大学に入ると始業式とか終業式とかないから、たしかに節目とか意識しにくいですね。