親権者の利益相反行為について調べてみました。
自分の子ども(名義)の土地を、その子の親御さんが勝手に売却してしまったり、抵当権を設定してしまったりした場合に、(成人した)子どもが、(抵当権)登記の抹消請求をしうるか等が問題となります。
824条(財産の管理及び代表)
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
826条(利益相反行為)
1項 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2項 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
有名な判例があります。
(最判昭48・4・24)
親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは、親権者の意図やその行為の現実の結果のいかんにかかわらず、本条二項の利益相反行為にあたる。
(最判平4・12・10)
「親権者は、原則として、子の財産上の地位に変動を及ぼす一切の法律行為につき子を代理する権限を有する(民法八二四条)ところ、親権者が右権限を濫用して法律行為をした場合において、その行為の相手方が右濫用の事実を知り又は知り得べかりしときは、民法九三条ただし書の規定を類推適用して、その行為の効果は子には及ばないと解するのが相当である」
「親権者が子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為は、利益相反行為に当たらないものであるから、それが子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情が存しない限り、親権者による代理権の濫用に当たると解することはできないものというべきである。したがって、親権者が子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為について、それが子自身に経済的利益をもたらすものでないことから直ちに第三者の利益のみを図るものとして親権者による代理権の濫用に当たると解するのは相当でない。」
判例は93条の但書で対処しているようです。
93条(心裡留保)
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
他にも意外と826条に関する判例は多いです。要旨だけですが。
(大判大9・1・21)
未成年者が受贈者として贈与契約をするのは、贈与者が親権者であっても、特別代理人を必要としない。
(最判昭35・2・25)
親権者たる父母の一方に本条一項にいう利益相反関係があるときは、利益相反関係のない親権者と同項の特別代理人とが共同して子のための代理行為をなすべきである。
(最判昭43・10・8)
親権者が第三者の金銭債務につき、自ら連帯保証をするとともに、同一債務につき子を代理して連帯保証をし、かつ、親権者と子の共有する不動産に抵当権を設定する行為は、本条にいわゆる利益相反行為にあたる。
(最判昭52・11・8)
株式が未成年の子とその親権者を含む数人の共有に属する場合において、親権者が未成年の子を代理して商法二〇三条二項にいう株主の権利を行使すべき者を指定する行為は、これを親権者自身と指定するときであっても、利益相反行為にあたらない。
(最判昭57・11・26)
家裁選任の特別代理人もまた子が担保提供をしたのと同一の債務につき連帯保証人となっていた場合、子と利益が相反することは行為自体から当然予想されるものであり、その特別代理人は選任審判により付与された権限を行使することができない。
あと、代理権の濫用は、夫婦間でも問題です。
できたら明日書いてみます。