続々・報道と名誉・プライバシーの関係について調べてみました。


死者への名誉毀損は刑法により定められています。


刑法230条(名誉毀損)
1項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。


判例では間接的に死者の人格権を保護しようとするものがあります。


(東京高裁昭54・3・14)

1 死者に対する遺族の敬愛追慕の情は、一種の人格的法益として法の保護の対象となり、これを違法に侵害する行為は、不法行為を構成する。
2 死者の名誉を害するような事実について記述された部分のある著作物の出版により、同人を実父のように敬愛追慕していたその甥が精神的苦痛を被つたとしても、右出版が死後四四年余を経た時点でなされたときは、記述された事実が虚偽であり、かつその事実が重大で、時間的経過にもかかわらず、同人に対する敬愛追慕の情を受忍し難い程度に害されたものでないかぎり、右出版行為に違法性はなく、慰籍料の請求は認められない。


責任を受けるのは、民法の715条で、使用者責任が問われ、記者個人の責任はあまり取られないようです。
情報提供者についても一定の場合、責任が追及されることがあります。


名誉毀損の成否をめぐっての判例は結構あります。
まず、娯楽・興味本位のメディアや記事は、読者も真実性を期待しておらず、社会的評価の低下もありえないとするものが下級審に見受けられます。
しかし、娯楽性は名誉毀損の成否には関係ないとする判例もあります。


(最判平9・5・27)

 新聞記事による名誉毀損にあっては、他人の社会的評価を低下させる内容の記事を掲載した新聞が発行され、当該記事の対象とされた者がその記事内容に従って評価を受ける危険性が生ずることによって、不法行為が成立するのであって、当該新聞の編集方針、その主な読者の構成及びこれらに基づく当該新聞の性質についての社会の一般的な評価は、右不法行為責任の成否を左右するものではないというべきである。けだし、ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものであり、たとい、当該新聞が主に興味本位の内容の記事を掲載することを編集の方針とし、読者層もその編集方針に対応するものであったとしても、当該新聞が報道媒体としての性格を有している以上は、その読者も当該新聞に掲載される記事がおしなべて根も葉もないものと認識しているものではなく、当該記事に幾分かの真実も含まれているものと考えるのが通常であろうから、その掲載記事により記事の対象とされた者の社会的評価が低下させられる危険性が生ずることを否定することはできないからである。


名誉毀損の成立時期についても判例があります。


(最判平9・5・27)

「新聞記事による名誉毀損にあっては、これを掲載した新聞が発行され、読者がこれを閲読し得る状態になった時点で、右記事により事実を摘示された人の客観的な社会的評価が低下するのであるから、その人が当該記事の掲載を知ったかどうかにかかわらず、名誉毀損による損害はその時点で発生していることになる。被害者が損害を知ったことは、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点(同法七二四条)としての意味を有するにすぎないのである。」
「新聞の発行によって名誉毀損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたとしても、これによって新聞発行の時点において被害者の客観的な社会的評価が低下したという事実自体に消長を来すわけではないから、被害者が有罪判決を受けたという事実は、これによって損害が消滅したものとして、既に生じている名誉毀損による損害賠償請求権を消滅させるものではない。このように解することが刑事裁判制度の役割を否定することにつながるものでないことは、いうまでもないところである。」
「また、名誉毀損による損害について加害者が被害者に支払うべき慰謝料の額は、事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情を斟酌して裁判所が裁量によって算定するものであり、右諸般の事情には、被害者の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価が当該名誉毀損以外の理由によって更に低下したという事実も含まれるものであるから、名誉毀損による損害が生じた後に被害者が有罪判決を受けたという事実を斟酌して慰謝料の額を算定することが許される。」


名誉毀損の成立時期を現時点に置く考え方は、メディアの責任を不当に免除しかねないという問題は残ります。








奥が深いです、メディア法。
テスト何が出るんだろう(´・ω・)