プライバシー権(13条)について調べてみました。


個人情報がたからかに謳われる今日、プライバシー権も重要視されつつあります。



プライバシー権の内容
 「私生活をみだりに公開されない権利」というのが出発点。
 もっとも、今日においては、いろいろな定義がなされています。
 「自己の情報を自由にコントロールしうる権利」と、ダブスクではならいました。


プライバシー権に関わる判例


表現の自由(21条)との等価値的利益考量などで具体的に考えます。


最判平6・2・8)
ある者の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合に、その者のその後の生活状況、当該刑事事件それ自体の歴史的又は社会的な意義その者の事件における当事者としての重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性を併せて判断し、右の前科等にかかわる事実を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するときは、右の者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる。


最判平14・9・24)
東京高裁は、プライバシーの内容について、「私人が、その意に反して、自らの私生活における精神的平穏を害するような事実を公表されることの利益」であるとし、「被控訴人がみだりに公開されることを欲せず、それが公開されると被控訴人に精神的苦痛を与える性質の私的生活上の事実が記述されること」が被控訴人のプライバシーを侵害すると述べた。
そして、プライバシーの侵害を成立させる表現の公然性の要件について、「知る者が多数おり、その者らにとって、当該表現が誰を指すのかが明らかであれば」、「事実が不特定多数の者が知り得る状態に置かれれば、それで公然性の要件は満たされる」とし、それ以外は第一審判決とほぼ同様の事実を認定した。


1.私生活上の利益であるか否か、2.一般人の感受性を基準として、当該個人の立場に立った場合、その情報の公開をしてほしくないと思うか、3.社会一般にまだ知られていない情報か等が判断基準になります。


プライバシーを侵害する行為でも、違法性が阻却される場合はあります。
最近の判例では、


東京高裁判平14・1・16、最判15・9・12
「1.当該個人情報の内容及び性質ならびにこれがプライバシーの権利として保護されるべき程度、2.開示行為によりその個人が被った具体的な不利益の内容及び程度、3.開示の目的の正当性並びに開示の有用性及び必要性、4.開示の方法及び態様、5.当該個人情報の収集の目的と開示の目的との間の関連性の有無及び程度、6.その個人の同意を得なかったことがやむをえないと考えられるような事情の有無などの諸要素を総合考慮し、一般人の感受性を基準として、その個人の同意がなかったとしても当該個人情報の開示が社会通念上許容される場合に当たるかどうかを判断すべきである。」


他にも、


(大阪高判平8・9・27)
公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づく自己の分娩に関する診療報酬明細書の公開請求に対し,県知事が同条例8条1号の非公開事由に該当するとしてした非公開決定につき,同号は,公文書に記載されている個人情報が本人以外の者に公開されることによって本人のプライバシーが侵害されるのを防止するという趣旨の規定と解されるから,公開を請求する者の個人情報を記載した公文書は同号所定の公文書には含まれないと解すべきであり,前記診療報酬明細書は,同号の公文書に該当しないとして,前記決定を取り消した事例。



プライバシーや名誉を害されたからといって、そうそう簡単に、民法や刑法上の責任は問われません。
表現の自由(21条)も尊重されるべきだからです。



最判昭62・4・24「サンケイ新聞事件」)
一 新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉殿損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。二 新聞社が新聞紙上に掲載した甲政党の意見広告が、乙政党の社会的評価の低下を狙つたものであるが乙政党を批判・論評する内容のものであり、かつ、その記事中乙政党の綱領等の要約等が一部必ずしも妥当又は正確とはいえないとしても、右要約のための綱領等の引用文言自体は原文のままであり、要点を外したものといえないなど原判示の事実関係のもとでは、右広告の掲載は、その広告が公共の利害に関する事実にかかり専ら公益を図る目的に出たものであり、かつ、主要な点において真実の証明があつたものとして、名誉段損の不法行為となるものではない。


知る権利やアクセス権とも若干関係あります。


最判平16・11・25)
放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等は,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。




刑事訴訟法でもよく問題になってます。
カメラとビデオカメラでは、ビデオカメラの方が侵害の程度が高いです。



最判昭44・12・24)京都府学連デモ事件
憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これは、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。しかしながら、個人の有する右自由も、国家権力の行使から無制限に保護されるわけでなく、公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。そして、犯罪を捜査することは、公共の福祉のため警察に与えられた国家作用の一つであり、警察にはこれを遂行すべき責務があるのであるから(警察法2条1項参照)、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼう等が含まれても、これが許容される場合がありうるものといわなければならない。
 そこで、その許容される限度について考察すると、身体の拘束を受けている被疑者の写真撮影を規定した刑訴法218条2項のような場合のほか、次のような場合には、撮影される本人の同意がなく、また裁判官の令状がなくても、警察官による個人の容ぼう等の撮影が許容されるものと解すべきである。すなわち、現に犯罪が行なわれもしくは行なわれたのち間がないと認められる場合であつて、しかも証拠保全の必要性および緊急性があり、かつその撮影が一般的に許容される限度をこえない相当な方法をもつて行なわれるときである。このような場合に行なわれる警察官による写真撮影は、その対象の中に、犯人の容ぼう等のほか、犯人の身辺または被写体とされた物件の近くにいたためこれを除外できない状況にある第三者である個人の容ぼう等を含むことになつても、憲法13条、35条に違反しないものと解すべきである。



最判昭63・4・1)山川テレビカメラ事件
確かにその承諾なくしてみだりにその容貌等を撮影されない自由は、いわゆるプライバシーの権利の1コロラリーとして憲法13条の保障するところというべきであるけれども、いかなる場合においても、犯罪捜査のための写真撮影が許容されないとする趣旨まで包含するものではないとするのが相当であって、当該現場において犯罪が発生する相当高度の蓋然性が認められる場合であり、あらかじめ証拠保全の手段・方法をとっておく、必要性及び緊急性があり、かつ、その撮影、録画が社会通念に照らして相当と認められる方法でもって行われる時には、現に犯罪が行われる時点以前から犯罪の発生が予測される場所を継続的、自動的に撮影、録画することも許されると解すべきである。





判例も覚えるのが多いと大変です。