因果関係について調べてみました。


因果関係について適当にまとめてみました。


因果関係といえば、相当因果関係説がメジャーです。
社会生活上の経験に照らして、通常その行為からその結果が発生することが相当だとみられる場合に因果関係を認めます。


相当性判断の基礎事情については客観的相当因果関係説と折衷的相当因果関係説が有力です。
客観的相当因果関係説は、裁判の時点において、行為当時に客観的に存在したすべての事情、および行為後に生じた事情については経験則上予見可能な事情を判断基準とします。
折衷的相当因果関係説は、行為当時、一般人が認識し、または予見しえた事情、および行為者が認識し、予見していた事情を判断基準とします。


(最決昭42・10・24)

同乗者が進行中の自動車の屋根の上から被害者をさかさまに引きずり降ろし、アスフアルト舖装道路上に転落させるというがごときことは、経験上、普通、予想しえられるところではなく、ことに、本件においては、被害者の死因となつた頭部の傷害が最初の被告人の自動車との衝突の際に生じたものか、同乗者が被害者を自動車の屋根から引きずり降ろし路上に転落させた際に生じたものか確定しがたいというのであつて、このような場合に被告人の前記過失行為から被害者の前記死の結果の発生することが、われわれの経験則上当然予想しえられるところであるとは到底いえない。



行為者の認識した因果経過と、現実に発生した因果経過とが異なっている場合、すなわち因果関係に錯誤がある場合に故意が阻却されないかも、重要論点です。
被害者を絞殺した後、砂浜に放置しようとした事件(実際の被害者は気絶しただけであり、砂浜の砂を吸引して窒息死した)の判例が有名です。


(大判大12・4・30)

之を社会生活上の普通観念に照らし被告の殺害の目的を以ってなしたる行為とAの死との間に原因結果の関係あることを認むるを正当とすべく被告の誤認により死体遺棄の目的に出でたる行為は前記の因果関係を遮断するものに非ざる



最近の判例でも、重要なものがあります。


(最判平16・3・22)

客観的にみれば,第1行為(実行犯3名が,宮城県石巻市内の路上において,計画どおり,犯人使用車をV使用車に追突させた上,示談交渉を装ってVを犯人使用車の助手席に誘い入れた。同日午後9時30分ころ,Dが,多量のクロロホルムを染み込ませてあるタオルをVの背後からその鼻口部に押し当て,Cもその腕を押さえるなどして,クロロホルムの吸引を続けさせてVを昏倒させた行為)は,人を死に至らしめる危険性の相当高い行為であった。
実行犯3名の殺害計画は,クロロホルムを吸引させてVを失神させた上,その失神状態を利用して,Vを港まで運び自動車ごと海中に転落させてでき死させるというものであって,第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること,第1行為に成功した場合,それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや,第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと,第1行為は第2行為に密接な行為であり,実行犯3名が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから,その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
実行犯3名は,クロロホルムを吸引させてVを失神させた上自動車ごと海中に転落させるという一連の殺人行為に着手して,その目的を遂げたのであるから,たとえ,実行犯3名の認識と異なり,第2行為の前の時点でVが第1行為により死亡していたとしても,殺人の故意に欠けるところはなく,実行犯3名については殺人既遂の共同正犯が成立するものと認められる。



他にも、結果的加重犯との関係で、因果関係が問題となります。
重い結果について、過失、相当因果関係を要するかについて、複数の説があります。
判例は、重い結果発生について、条件関係が認められればよいとしますが、責任主義の観点から妥当でないのではないかという指摘がなされています。


(最判昭32・2・26)

夫婦喧嘩の末夫が妻を仰向けに引き倒して馬乗りとなり両手でその頸部を圧迫する等の暴行を加え、因つて特異体質である妻をシヨツク死するに至らしめたときは、致死の結果を予見する可能性がなかつたとしても傷害致死罪を構成する。


(最判昭46・6・17)

致死の原因たる暴行は、必ずしもそれが死亡の唯一の原因または直接の原因であることを要するものではなく、たまたま被害者の身体に高度の病変があつたため、これとあいまつて死亡の結果を生じた場合であつても、右暴行による致死の罪の成立を妨げない。




ダブスクでは折衷的相当因果関係説で習いました。
ゼミの先生は客観的相当因果関係説ですが、答案では、条件説と変わらなくなるおそれがある、として折衷説でいかしてもらってます。

再入国の自由について調べてみました。


再入国とは、在留資格を有する外国人がその在留期間の満了の日以前に日本に再び入国することを言います。


まず、外国人に入国の自由が認められないことは、国際慣習法上当然のこととされています。
憲法が認める外国人の人権とは、すでに入国している外国人についての問題だからです。


もっとも、出国の自由は、外国人にも憲法上保障されていると解されています。


(最判昭32・12・25)

憲法二二条二項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。



再入国については、新規入国と同視する見解と同視しない見解があり、さらに同視しない見解では、再入国の自由は一時的海外渡航の自由として憲法上の権利であるとする見解と、ならないとする見解に分かれます。


再入国の自由と関連して、再入国の許可・不許可の決定についての法務大臣の裁量の拘束についても問題となります。
判例では、森川キャサリーン事件が有名です。
下級審判決では、外国人の海外旅行は、日本からの出国と、日本への再度の入国に過ぎないとして、外国人の再入国の自由を否定しました。


(最判平4・11・16)「森川キャサリーン事件」

「わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではないことは、昭和32年と昭和53年の最大判の趣旨に徴して明らかである」



判例は、法務大臣不許可の判断も、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものではないとして、正当としています。


ちなみに、キャサリーンさんは、諮問押捺拒否を理由に、法務大臣から不許可処分を受けましたが、諮問押捺の合憲性についても判例があります。



(最判平7・12・15)

指紋は、指先の紋様であり、それ自体では個人の表生活や人格、思想、信条、良心等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある。このような意味で、指紋の押なつ制度は、国民の私生活上の自由と密接な関連をもつものと考えられる。
 憲法一三条は、国民の私生活上の自由が国家権力の行使に対して保護されるべきことを規定していると解されるので、個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、同条の趣旨に反して許されず、また、右の自由の保障は我が国に在留する外国人にも等しく及ぶと解される。
 しかしながら、右の自由も、国家権力の行使に対して無制限に保護されるものではなく、公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受けることは、憲法一三条に定められているところである。
 そこで、外国人登録法が定める在留外国人についての指紋押なつ制度についてみると、同制度は、昭和二七年に外国人登録法(同年法律第一二五号)が立法された際に、同法一条の「本邦に在留する外国人の登録を実施することによって外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資する」という目的を達成するため、戸籍制度のない外国人の人物特定につき最も確実な制度として制定されたもので、その立法目的には十分な合理性があり、かつ、必要性も肯定できるものである。また、その具体的な制度内容については、立法後累次の改正があり、立法当初二年ごとの切替え時に必要とされていた押なつ義務が、その後三年ごと、五年ごとと緩和され、昭和六二年法律第一〇二号によって原則として最初の一回のみとされ、また、昭和三三年律第三号によって在留期間一年未満の者の押なつ義務が免除されたほか、平成四年法律第六六号によって永住者(出入国管理及び難民認定法別表第二上欄の永住者の在留資格をもつ者)及び特別永住者(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特号永住者)にっき押なつ制度が廃止されるなど社会の状況変化に応じた改正が行われているが、本件当時の制度内容は、押なつ義務が三年に一度で、押なつ対象指紋も一指のみであり、加えて、その強制も罰則による間接強制にとどまるものであって、精神的、肉体的に過度の苦痛を伴うものとまではいえず、方法としても、一般的に許容される限度を超えない相当なものであったと認めら
れる。
 右のような指紋押なつ制度を定めた外国人登録法一四条一項、一八条一項八号が憲法一三条に違反するものでないことは当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかであり、所論は理由がない。
 在留外国人を対象とする指紋押なつ制度は、前記一のような目的、必要性、相当性が認められ、戸籍制度のない外国人については、日本人とは社会的事実関係上の差異があって、その取扱いの差異には合理的根拠があるので、外国人登録法の同条項が憲法一四条に違反するものでないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかであり、所論は理由がない。




あんまりいい気分はしないのが確かですね。
テロとの戦い」を理由に、新入国制度も動き始めたようですが、プライバシー侵害が懸念されます。

海外渡航の自由について調べてみました。


海外渡航(旅行)の自由については明文の規定はありません。
しかし、憲法22条2項によって、海外移住の自由が保障されているのに、それよりも短期間の海外渡航が認められないとするのは不当です。
なので、同条同項によって海外渡航の自由も保障されるとするのが多数説・判例です。
22条1項説、13条説もあります。


22条 
1項:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2項:何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。



(最判昭33・9・10)「帆足計事件」

憲法二二条二項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由をも含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである。



22条によって保障されるものですが、海外渡航には留学や海外派遣等も含むものであり、経済的自由の性質のみを有する権利ではなく、精神的自由権としての性格も有するとするのが、最近の学説らしく、意見審査基準を考えるにあたって、厳しい判断基準にするのがいい…らしいです。



前述の判例では、旅券法13条1項5号(「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」へのパスポートの発給を拒否できるとする)の合憲性が問題となっています。


(最判昭33・9・10) 「帆足計事件」

憲法二二条二項の「外国に移住する自由」には外国へ一時旅行する自由をも含むものと解すべきであるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するものと解すべきである。そして旅券発給を拒否することができる場合として、旅券法一三条一項五号が「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」と規定したのは、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものとみることができ、所論のごとく右規定が漠然たる基準を示す無効のものであるということはできない。されば右旅券法の規定に関する所論違憲の主張は採用できない。



なお、現在では海外渡航の自由が重要な憲法上の権利であり、国際的な文化・経済・政治領域における相互理解の進展と円満な国際関係の形成という観点から、旅券発給は海外に渡航する者と旅券保持者の同一性を公に証明する公証行為であり、旅券は外国に対して当該渡航者の保護を依頼するために政府が発行する身分証明書であると解するのが有力です。
このように考えると、外務大臣の判断権は、羈束裁量となり、厳格な司法審査に服することになります。なので、判例のように、明白性の基準はとらないことになります。




パスポートが今年の4月までです。やばい!!!

親会社と子会社について調べてみました。


2条(定義)
3項:子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
4項:親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。



会社は親子会社関係を形成して、親会社から子会社に製品を販売させたり、部品の納入を親子会社間で行ったりして、親会社や企業グループの利益を増加させ、商圏を広げたり、経営競争を排除しています。会社の競争力の維持強化を図っているのです。



子会社の事業全般についての決定権限は、その取締役または取締役会に委ねられ(362条)、取締役会設置会社では、親会社が大株主として参加する株主総会は限定的な事項についてのみ決定権限を有しているので(295条2項)、子会社の直接の権限行使は行えません。子会社独立の原則ともいえます。


もっとも、会社法制定により、取締役会非設置会社では、株主総会は、株式会社に関する一切の事項を決議することができるので(295条)、株主総会を通じた直接の権限行使も可能となりました。
取締役会設置会社でも、親会社は、子会社の株主総会における子会社の取締役の選任・解任権を通じて子会社に対する事実上の影響力を行使することもでき、子会社を支配する関係があります。
そして、グループ全体や親会社の利益のため、子会社にとっては利益に反することを強いられる可能性もある。
よって、親子会社には規制の必要が生じ、子会社が不利益を被った場合、子会社の少数派株主がいかなる責任追及ができるかが問題となります。



362条(取締役会の権限等)
1項:取締役会は、すべての取締役で組織する。
2項:取締役会は、次に掲げる職務を行う。
 1号 取締役会設置会社の業務執行の決定
 2号 取締役の職務の執行の監督
 3号 代表取締役の選定及び解職
3項:取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4項:取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
 1号 重要な財産の処分及び譲受け
 2号 多額の借財
 3号 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
 4号 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
 5号 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重な事項として法務省令で定める事項
 6号 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
 7号 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5項:大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。



295条(株主総会の権限)
1項:株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2項:前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3項:この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。



子会社の取締役は、自己の責任において子会社の利益のために業務執行をしなければなりません。子会社の不利益に伴う善管注意義務・忠実義務違反の責任も負います(423条、429条)。


423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
1項:取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2項:取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3項:第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
 1号 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
 2号 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
 3号 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)


429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
1項:役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2項:次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
 1号 取締役及び執行役 次に掲げる行為
 イ 株式、新株予約権社債若しくは新株予約権社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
 ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
 ハ 虚偽の登記
 ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
 2号 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
 3号 監査役及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
 4号 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録



子会社の損害については、親会社の代表取締役を子会社の事実上の取締役と認定し、その責任を認めた下級審、法人格否認の法理の適用を認めた下級審などがあります。



親会社の取締役が子会社の業務行為から発生した損害につき任務懈怠責任を負うかについても判例があります。



(最判平5・9・9)

「甲株式会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙株式会社の株式を取得することは、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二一〇条に定める除外事由のある場合又はそれが無償によるものであるなど特段の事情のある場合を除き、同条により許されないものと解すべきである。」
「 1 原審の適法に確定した事実関係の要旨は、(一) 三井鉱山株式会社(以下「三井鉱山」という。)は、昭和五〇年当時、三井三池開発株式会社(以下「三池開発」という。)のすべての発行済み株式を有していた、(二) 三井鉱山は、同年一二月三日、三池開発に対して、Aの有する三井鉱山株式一五五〇万株(以下「本件株式」という。)を同人の要求する価格で買い取った上、三井鉱山の関連会社にAからの買入れ価格よりも低い価格で売り渡すことを指示した、(三) 三池開発は、右指示に従い、同月二五日、Aとの間で、本件株式について代金を八二億一五〇〇万円とする売買契約を締結し、契約と同時に株券の引渡しを受け、昭和五一年一一月三〇日までに代金全額を支払い、同年一月から三月にかけて、本件株式を複数の三井鉱山の関連会社に対して代金合計四六億六三四〇万円で売り渡した、というのである。
 2 以上の事実関係によれば、三池開発の資産は、本件株式の買入価格八二億一五〇〇万円と売渡価格四六億六三四〇万円との差額に相当する三五億五一六〇万円減少しているのであるから、他に特段の主張立証のない本件においては、三池開発の全株式を有する三井鉱山は同額に相当する資産の減少を来しこれと同額の損害を受けたものというべきである。また、三井鉱山の受けた右損害と三池開発が本件株式を取得したこととの間に相当因果関係があることも明らかである。したがって、本件株式の取得により三井鉱山が三五億五一六〇万円の損害を受けたとする原審の判断は、結論において是認することができる。」



(東京地裁平13・1・25)

「親会社と子会社(孫会社も含む)は別個独立の法人であって、子会社(孫会社)について法人格否認の法理を適用すべき場合の他は、財産の帰属関係も別意に観念され、それぞれ独自の業務執行機関と監査機関も存することから、子会社の経営についての決定、業務執行は子会社の取締役(親会社の取締役が子会社の取締役をかねている場合は勿論その者も含めて)が行うものであり、親会社の取締役は、特段の事情のない限り、子会社の取締役の業務執行の結果子会社に損害が生じ、さらに親会社に損害を与えた場合であっても、直ちに親会社に対し任務懈怠の責任を負うものではない。
 もっとも、親会社と子会社の特殊な資本関係に鑑み、親会社の取締役が子会社に指図をするなど、実質的に子会社の意思決定を支配したと評価しうる場合であって、かつ、親会社の取締役の右指図が親会社に対する善管注意義務や法令に違反するような場合には、右特段の事情があるとして、親会社について生じた損害について、親会社の取締役に損害賠償責任が肯定されると解される。」




条文が多くてなかなか手ごわい会社法…。
うー嫌いです。

訴えの変更について調べてみました。


あけましておめでとうございます。


143条(訴えの変更)
1項:原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2項:請求の変更は、書面でしなければならない。
3項:前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
4項:裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。



訴えの変更とは、同一原告が訴訟継続中に同一被告との関係で新たな請求を審判対象とすることをいいます。
その趣旨は、原告の便宜・訴訟経済・裁判の統一にあるとされています。
常に原告が別訴を提起しなければならないのでは、原告にとって酷であるし、労力・経費の無駄になるし、裁判の不統一をもたらすおそれがあるからです。



訴えの変更の要件は以下の通りです。



1 請求の起訴に変更がないこと(143条1項)


2 著しく訴訟を遅滞させないこと(143条1項但書)


3 事実審の口頭弁論終結前であること(143条1項)


4 交換的変更(原告が従来の請求に替えて新たな請求の審判を求めること。判例は、原告による新請求の追加とその訴訟係属後の旧請求の取下げ又は放棄と理解する(最高裁昭和32年2月28日)。)の場合、相手方の同意があること(261条2項)



「請求の起訴に変更がない」とはどういうことをいうかについてが第一論点です。



(最判昭39・7・10)

 相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとつてもつて新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許されると解するのが相当である。
 そして、右の場合において、相手方の陳述した事実は、かならずしも、狭義の抗弁、再々抗弁などの防禦方法にかぎられず、相手方において請求の原因を否認して附加陳述するところのいわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含由れると解すべきである。
 ところで、原審判決(一審判決引用、以下同じ。)および一件記録によると、被上告人は、当初、上告人先代Aに対し係争家屋が被上告人の所有に属するとしてその所有権にもとづき係争家屋の明渡ならびに延滞賃料および賃料相当損害金の支払を請求したところ、同人は、係争家屋ぼ被上告人所有のもとの家屋を取りこわしたうえあらたに建築して上告人先代Aの所有に属する旨主張して積極的に被上告人の所有権を否認した。そこで、被上生人は上告人先代Aが知に陳述したところに従い係争家屋の所有権が同人に属することを前提として、あらためて本件土地の所有権にもとづき同人に対し係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、第一審において、予備的に追加したことが認められる。
 右訴訟の経過によると、本件においては、被上告人は、係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、上告人先代Aの提出したいわゆる積極否認にかかる事実を是認したうえこれにもとづいて新たに右請求を予備的に追加したものと認められるから、前段説示のところから明らかなとおり、右の訴の変更は許容するのが相当である。それゆえ、被上告人のした新の追加的変更を許容した原審判決の判断は相当というべぎであり、原審には、所論のような違法はない。



この判例は、請求の起訴を同一にするか否かについて明確に判示してはいませんが、「かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても」と判示しているので、請求の基礎に同一性があると積極的に解したものではないのではないかといわれています。


請求の変更前後の両請求の主要な争点が共通であって、旧請求についての訴訟資料や証拠資料を新請求の審理に利用することが期待できる関係にあり、かつ、各請求の利益主張が社会関係上同一または一連の紛争に関するものと認められる場合を指すとする、新堂・上田説が有力です。



相手方の陳述した事実に基づく訴えの変更の可否についても問題となります。
判例はさっきと同じです。



(最判昭39・7・10)

相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとつてもつて新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許されると解するのが相当である。そして、右の場合いおいて、相手方の陳述した事実は、かならずしも、狭義の抗弁、再々抗弁などの防禦方法にかぎられず、相手方において請求の原因を否認して附加陳述するところのいわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含由れると解すべきである。



「著しく訴訟手続を遅滞させる」の意義についても重要論点です。



(東京地裁平14・2・28)

本件訴えの変更は、平成13年9月27日午後3時の本件第2回口頭弁論期日において、いったん弁論が終結された後、原告の申立てにより弁論が再開され、さらに原告の申立てにより期日変更がなされ、変更後の同年12月18日午後1時30分の本権第3回口頭弁論期日において、当裁判所が当事者双方に対し、次回、消滅時効の抗弁及びこれに対する時効中断等の再抗弁の主張整理後、終結予定である旨告げたにもかかわらず、原告が平成14年1月17日に突如として同月24日付け訴え変更の申立書を当裁判所に送付し、同月24日午後3時の本件口頭弁論期日において同申立書を陳述してなされたものであるところ、本件訴えの変更後の請求は、請求の趣旨の変更を伴う上、その請求原因として、本件訴えの変更前の請求原因として主張した本件管理委任契約とは別個の契約等を主張するものであるから、被告の争い方如何によっては、さらなる主張整理及び証拠調べが必要となることも十分予想されことに鑑みると、相当の時間を要することが認められるから、本件訴えの変更は、民事訴訟法143条4項により許されないといわざるを得ない。



裁判が終結予定であること、新たに主張整理及び証拠調べが必要となることが十分に予想されること等がキーワードになりそうです。



特に苦手意識のある民訴法と行政法をどうにかしたい今年です。
もちろん他の分野も苦手というかできないのですが…。

早くローに行きたい、行けるといいな。

続・いろんな定義について調べてみました。


アリプロ聞きながら、きのうの続きをまとめてみました。
ギアスのEDが好きです。




弁護人の援助を受ける権利

 弁護人依頼権、弁護人選任権のこと。憲法は、被告人について、つねに弁護人依頼権があるとし(憲法37条3項前段)、被疑者についても、身柄拘束を受けたときに限ってではあるが、弁護人依頼権を認めている(憲法34条前段)。そして、刑事訴訟法は、さらに一歩進めて、被疑者も身柄拘束の有無を問わず、つねに弁護人選任権があると規定している(30条1項)。



接見交通権(39条1項)

 被疑者ないし被告人の弁護人との接見交通は、被疑者らの基本的な権利であると同時に、弁護人の固有権でもある。接見交通を権利としてみるとき、接見交通権と呼ぶ。
 憲法34条前段は、身柄拘束中の被疑者に弁護人依頼権を与えているが、それは単に被疑者が弁護人を選任することを検察が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任したうえで、弁護人に相談し、その助言を受けるなど、弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障しているのであり、刑事訴訟法39条1項は、この憲法の趣旨にのっとって設けられたものである。
 もっとも、接見交通は全く自由に行われるものではなく、法令で、?被疑者の逃亡、?罪障の隠滅、または、?戒護に支障のある物の授受を防ぐため、必要な措置をとることができる(39条2項等)。



接見指定(39条3項)

 39条3項は、接見交通権と捜査の必要性の調和を図ろうとしたものであり、接見交通権が刑罰権や捜査権に対し、絶対的に優位に立つものではないことを示している。
 もっとも、被疑者の接見交通権は、刑事手続上、最も重要な基本的権利のひとつであり、前述したとおり、憲法34条に由来する。
 よって、あくまで自由な接見交通を規定した39条1項が原則であり、例外である39条3項の接見指定が許されるのは、限定的な場合に限られるべきである。
 そこで、同条同項の「捜査のため必要なとき」の意義が問題となるが、これは、現に被疑者を取調べ中であったり、検証・実況見分に立ち合わせている場合、間近いときに取調べ等を行う確実な予定があるときなど、捜査に重大な支障が生じる場合に限られる。そして、特に第1回目の接見は、被疑者にとって、重要な機会であり、わずかな時間でも、できる限り接見を認めるべきである。
 また、接見指定がなされた場合、検察官は弁護人と協議し、できる限り速やかに接見ができるように配慮せねばならず、被疑者の防御を不当に制限することは許されない(39条3項但書)。
 その方式としては、弁護人に不必要な負担を課す一般指定制度ではなく、通知事件制度が1988年から採用されている。



訴因変更の要否(312条)

 訴因変更の要否は、判決で認定される事実と訴因に記載された事実を比較して決すべきである。その判断基準は以下のように分類される。
 まず、審判対象画定のために必要な事項即ち訴因の記載として不可欠な事項の変更は、必ず訴因変更をする必要がある。そうでなくとも、被告人の防御にとって重要な事項であれば、訴因に記載された以上、争点の明確化のため、原則、訴因変更が必要である。もっとも、被告人の防御に重要な事項であっても、審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではなく、また被告人にとって不利益を生じるものでなければ、例外的に訴因変更は不要であると解する(たとえば、訴因の一部認定(縮小認定)も例外的に変更不要である)。



訴因変更の可否

 訴因変更の可否は、訴因として掲げられた具体的な事実を比較し、同一手続において処理することが妥当かどうかを判断し、決すべきである。
 判例は、「基本的事実の同一性」を判断基準としており、その判断にあたっては、構成要件や、罪質の異同の程度のほか、日時・場所の近接性、被疑者・物件などの同一性などが考慮される。
 つまり、2つの訴因が両立し得ない関係にあれば、「公訴事実の同一性」が肯定される。



訴因変更命令(312条2項)

 審判の対象を設定・変更する権限は、本来、検察官がもっているが、裁判所の得た心証との間で見解が異なることもある。そのようなとき、検察官にしか訴因変更の権限がないとすると、検察官が訴因を変更すれば、有罪判決を言い渡せるのに、むざむざ無罪を言い渡さなければならない事態も予想される。このように、不当に被告人を利する事態を防ぐため、312条2項は規定された。
 もっとも、訴因変更を命じても、検察官が命令に従わなければ意味がない。そこで、訴因変更命令に形成力がある、すなわち、検察官が命令に従わなくとも、訴因が変更されたのと同じ法的効力が生じるのかが問題となるが、審判の対象を設定し、変更する権限はあくまで検察官にあることから、裁判所に訴因変更命令に形成力は認められない。
 また、312条2項は裁判所に訴因変更命令の権限を与えたにとどまり、訴因変更を命じる義務まで課したものではない。
 ただし、判例は、?訴因を変更しなければ、無罪とするほかないが、?訴因を変更すれば有罪となることが証拠上明らかであり、その罪が相当重大である場合には、例外的に裁判所には検察官に訴因変更手続を促し、または命じる義務があるとした。
 なお、通常は、裁判長が検察官に対して釈明を求め(規則208条1項)、それでも足りないときは、訴因の変更を促し、あるいはさらに訴因変更を命じるといった段階を踏むことになっており、事案によっては、求釈明により、裁判所は訴訟法上の義務を尽くしたと評価されることもある。




これが「やま」とは、ばかだな自分(′∀`)
もう年の瀬ですね。

いろんな定義について調べてみました。


掃除中にテスト前に書いたと思われるメモが出てきました。
「刑ソやま」…。しかもローゼンのらくがき入り…。
なにかの役にたつかもなのでまとめておきます。



別件逮捕・勾留

捜査機関がいわば本命視している被疑事実(本件)について被疑者を取り調べる目的で、それとは異なる被疑事実(別件)によって、逮捕・勾留し、その身柄拘束期間を本件についての取調べについて利用する捜査手段。



本件基準説

令状請求の時点では、表に現れていなかった本件を基準にして、別件による逮捕・勾留が実質的には、本件について逮捕・勾留したものといえる場合には、当該逮捕・勾留自体が違法だとする考え方。



事件単位の原則

逮捕も勾留も事件(被疑事件)ごとに行われるべきだとの考え方。



一罪一逮捕一勾留の原則

同一の事件(被疑事件)については、これを分割して複数の逮捕・勾留をすることは許されない。



簡易公判手続

起訴状記載の事実につき、被告人が有罪の陳述をした場合は、死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役・禁錮にあたる事件をのぞき、簡易公判手続により審判が可能となる(291条の2)。簡易公判手続では、当事者が異議を述べない限り、伝聞法則が適用されない(320条2項)。そのほか、証拠調べに関する主要な規定の適用がなく、適当と認める方法でこれを行うことができる(307条の2)。



逮捕(199条以下、規則143条の3)

被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける処分。



勾留(204条〜206条、207条(→60条))

逮捕後なお引き続き比較的長時間の身柄拘束の必要があるときに、被疑者の身柄を拘束する裁判およびその執行。



起訴状一本主義

 検察官は起訴にあたって、起訴状だけを提出しなければならないという原則(256条6項)。その目的は、予断防止である。裁判官が事件について何ら先入観を持たずに第一回公判期日にのぞみ、公正な訴訟手続を進めることができるようにして、公正な裁判所としての性格を確保しようとしたものである(憲法37条)。
 まず、予断を生じさせる恐れのある書類その他のものを添付することは許されない。もっとも、起訴状一本主義は、予断防止のための原則であるから、裁判所に予断を抱かせるおそれのない書類などを添付しても、256条6項に違反しない。
 つぎに、予断を生じさせる恐れのある文書の内容を引用することも許されない。しかし、たとえば脅迫文が婉曲・暗示的であって、詳細に引用しなければ文書の趣旨が明らかにならない場合や、名誉を毀損する文書の一部を引用することは、訴因を明示するために許されるとするのが判例である。
 では、256条6項は、予断を生じさせる事項を添付または引用することだけを明文で禁じているが、その他不必要な事項を記載すること(余事記載)も禁じられる場合はないのか。たとえば、同種の犯罪について前科があることを起訴状に記載しても許されるか。
 原則として、同種の前科を記載すれば、裁判官に予断を抱かせるから、256条6項に違反すると考えられる。
 しかし、判例は、たとえば、?常習累犯窃盗のように、前科が構成要件であるとき、?前科・悪歴の存在が、恐喝の手段になっているときなど、前科が公訴事実の内容となっている場合には、前科を記載しても適法だと判断した。



再逮捕・再勾留

 逮捕・勾留による身柄拘束について、刑事訴訟法は厳格な期間制限を規定しており(208条)、原則として、同一事件(被疑事実)については、逮捕・勾留は1回しか許されるべきではない(逮捕・勾留の一回性の原則)。
 しかし、たとえば、犯罪の嫌疑が十分でないため、被疑者を釈放した後に、新たに重大な証拠を発見したとか、逃亡や罪障隠滅のおそれが生じたなど、著しい事情変更があった場合にも、一切、再逮捕・再勾留が許されないとするのは実際上妥当ではない。そこで、再逮捕・再勾留は、それを正当化する程度の著しい事情変更があり、かつ、それを許すことが逮捕・勾留の不当な蒸し返しにならないと認められるときには、例外的に許すことができると考えるべきである(たとえば、判例は、先行する勾留期間の長短、その期間中の捜査経過、身柄釈放後の事情変更の内容、事案の軽重、検察官の意図その他諸般の事情を考慮すべきものとしている)。
 なお、逮捕については、再度の逮捕のありうることを前提とする規定がある(199条3項、規則148条1項8号)が、勾留については特に明文の規定はない。しかし、被疑者の勾留について逮捕前置主義が採られていることなどからすれば、法は、再勾留を禁止する趣旨とまでは解されない。ただし、勾留は逮捕に比べて身柄拘束期間が長いので、再勾留の許否の判断は、再逮捕の場合よりも厳格になされるべきであり、勾留期間の短縮も考慮すべきである。



任意捜査の原則(197条)

 強制処分法定主義(捜査において、強制処分を用いるのは刑事訴訟法にそれを許す特別の規定がある場合に限られる(197条1項但書))は、強制処分が対象者の重要な権利・利益に対する制約・侵害を伴うものであるから、法定の厳格な要件・手続にしたがってはじめて許されるべきだとの考えに基づくものと解される。さらに強制処分がそのような性質を持つものであることからすると、強制処分が法律上許される場合であっても、できるだけ強制でない処分(任意処分)によるべきであるといえ、197条はこのような「任意捜査の原則」を定めたものと理解されている。



令状主義

 憲法33条および35条は、被疑者の身柄拘束や捜索・押収は、原則として、あらかじめ裁判官の発する令状を得て行わなければならないものと規定し、これを受けて、刑事訴訟法に必要な規定が盛り込まれている。このように事前の令状が必要であることを「令状主義」という。これは、これらの強制処分が対象者の重要な権利・利益に対する制約・侵害を伴うものであることに鑑みて、その許否を、中立・公正な第三者的立場にある裁判官による司法審査(令状審査)にゆだねようとするものであり、その趣旨は強制処分一般に及ぶ。



意外に長い…。
今日はここまでで…。
紫だけちょっと仲間わけしてます。